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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2019.2月号


「人材確保と生産性向上に関する新たな施策の方向性」

 今月号では、2019 年度厚労省予算案をもとに、「Ⅰ.2019 年度の介護人材確保に向けた取り組み」を確認し、「Ⅱ.注目される2019 年度の新たな施策の方向性」を整理していきます。

 今回は、2019 年度の人材確保の手立てや生産性の向上として期待される新たな事業についての方向性とポイントを確認していきます。いずれも予算執行前の未確定情報であり、今後出される詳細な要件や適用時期などを確認しながら、計画的に準備・活用していきましょう。

【確認keyword】
「ICT導入支援事業の新設」「介護職員処遇改善加算、月額8万円相当の新加算の追加」「外国人介護労働、特定技能の追加」「介護入門者ステップアップ育成支援事業の新設」

[Ⅰ]2019 年度の介護人材確保に向けた取り組み

 2025年に団塊の世代が75歳以上となり、最大で約245万人の介護職員が必要と推計される中、政府は2019年度も引き続き、総合的な介護人材確保対策を継続していく方針を固め、消費増税財源が充当された様々な施策を盛り込んでいます(下図)。

福祉・介護人材確保に向けた平成31年度予算(案)の全体像

 こうした介護人材を確保する手立てにおいて、【環境改善】を図りつつ【資質の向上】と【参入促進】による三位一体の改革が不可欠となっています。【環境改善】では「働き方改革」をはじめ、マンパワー不足を補う「ICTや介護ロボットの活用」が推進され、【資質の向上】では「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」や「介護職員処遇改善加算」が推進されています。そして【参入促進】の一環では、「外国人労働力の活用」のほか「若年層や高齢者の雇用拡大」など、裾野を拡げた労働力の確保が重点化されています。介護事業所等では、地域医療介護総合確保基金などの各種情報を活用しながら人材確保や生産性向上の取り組みを加速していくことが大切です。

[Ⅱ]注目される2019 年度の新たな施策の方向性

 ここでは、人材確保の手立てや生産性の向上における2019 年度の新たな事業として期待される4 つの方向性とそのポイントを整理していきます。

■基金におけるICT 導入補助金の導入【2019 年度】

 昨今、少子高齢化による労働者人口の急減と高齢者人口の増加に伴って、介護・福祉サービスの需要の増加が懸念される中、安定的に介護サービスを提供する基盤づくりとして、マンパワーの確保や生産性の向上、働き方改革の推進が課題となっています。

 政府はAI・ロボット・ICT 等のテクノロジーの目覚ましい技術により、新しい価値やサービスを創出して人々の生活に豊かさをもたらす様々な施策を掲げ、介護分野ではデータヘルス改革の一端で「科学的介護」の実現をテーマに、介護ロボットの活用やICT 化対応が推進されています。「科学的介護」の実現にはリアルな介護情報が不可欠であり、介護事業者が利用者に関する介護情報を電子化していくことがデータヘルスの源泉となる点に留意しなければなりません。

 そこで今回、2019 年度予算では、介護分野のデータ収集と生産性向上を後押しするため、「ICT 導入支援事業」として介護記録と情報共有、請求業務が一気通貫で行える介護ソフトやタブレット端末等の導入に対する補助金が設定される予定です(下図)。また、「業務改善支援事業」として業務プロセスや職員配置及び作成文書の見直しなどに対する補助金も導入される予定となっています。今後明らかになる実施時期や要件などの詳細情報は、都道府県や取引業者からの情報提供を参考にしていきましょう。

地域医療介護総合確保基金(介護分)を活用した介護事業所に対する業務改善支援及びICT導入支援(平成31年度新規(案))

■介護職員処遇改善加算の画期的な見直し【2019 年10 月】

 2019 年10 月の消費増税時に実施する介護報酬改定では、介護処遇改善加算の見直しが行われます。今回の見直しは、経験・技能のあるベテラン介護福祉士への処遇を手厚くし、他産業と遜色ない賃金水準を確保する狙いがあります。ポイントは以下の3 点が挙げられ、とても画期的な点は処遇改善加算分を他の職員に充当できるという自由度の高い柔軟な運用が認められたことです(下図)。今後は詳細要件の確認とともに、まずは該当者を確認して適任者に対する具体的な金額設定を試算していきましょう。

勤続10 年以上の介護福祉士に対して、現行の介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲに月額8 万円相当の新加算を上乗せする(今後廃止予定のⅣとⅤは非該当)

②加算により「月8 万円の賃上げ」または「年収440 万円以上」の職員を事業所内に最低1 人以上確保する

③加算に該当しない職員の処遇改善に対しても自由に使える(下図の条件あり)

 

現行の処遇改善加算+更なる処遇改善のイメージ

 今回の見直しによって追加となる【特定技能(④)】の在留資格は、介護分野のみならず、深刻な人手不足に悩まされている外食、農業、建設など14 業種に外国人労働者の受け入れが拡大されました。この技能は2 段階で設定され、「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人における「1 号」の資格は最長5 年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格することが条件となっています。これに対し、より高度な試験に合格して熟練した技能を持つ人は「2 号」を取得でき、1~3 年ごとに在留期間を更新できる仕組みとなっています。「2 号」は【介護ビザ(②)】と同等に更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく、配偶者や子供ら家族の帯同も認められ、事実上の永住も可能となる見込みです。受け入れや在留管理は、法務省入国管理局を改組して「出入国在留管理庁」を4 月に設けて対応する予定となっています。

 外国人介護労働の受け入れ体制は急ピッチで整備が進められているものの、人材確保の即効性が期待できない地域では、他の確実な方策の検討が必要となるでしょう。

■介護入門者ステップアップ育成支援事業の新設【2019 年度】

 最後に確認する「介護入門者ステップアップ育成支援事業」は、2018 年度に新設された「アクティブシニア等に対する入門的研修(アクティブシニア介護人材バンク)」の次のステージに位置付けられる事業です。介護人材バンクの登録者に対して、試行的に介護の周辺業務等を体験(概ね3 ヵ月)してもらうことで、①アクティブシニア等多様な人材の参入促進、②介護職の機能分化・段階的なキャリアパスの実現、③多様な働き方の実現-を推進する狙いがあります。こうしたアクティブシニアの活用により、難易度の低い業務が切り分けできれば、介護職がキャリアや専門性に応じて利用者に対するケアや業務に専念できるようになり、専門職の役割を明確にする機能分化やキャリアパスの実現が期待されています。まずは、各自治体の介護人材バンクの登録状況を確認し、身近な協力者となるシニア人材と接点を持っていくことが大切です。

介護入門者ステップアップ支援事業・現任職員キャリアアップ支援事業

▼今月号の考察

 今回は、2019 年度に予定される人材確保と生産性向上の新たな施策の方向性を確認しました。人材確保の課題は一朝一夕に解決できませんが、介護キャリア段位制度や処遇改善加算などの制度や報酬、基金などの情報を活用し、対策を練りながら確実に足場を固めていくことが重要になります。以上、今後の取り組みに係る参考情報としてお役立て頂ければ幸いです。

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