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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2020.01月号


「介護文書の負担軽減策に関する方向性とポイント」

 今月号では、2019 年12 月10 日に公表された厚労省の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の中間取りまとめを参考にして、「Ⅰ. 実地指導の指導内容や実施方法の見直し」を確認し、「Ⅱ. 介護分野の文書に係る負担軽減策の方向性」について整理していきます。

 介護分野では人材不足や働き方改革等への対応を契機に、生産性向上に寄与するICT 全般のインフラ整備の必要性が高まっています。関連事項の方向性としてご参考にして頂ければ幸いです。

【確認keyword】
「介護分野の行政が求める帳票」「簡素化・標準化・ICT等の活用による負担軽減策」「介護DBとVISITを補完するCHASE」「人材不足や働き方改革への対応に不可欠なICT化」

[Ⅰ]実地指導の指導内容や実施方法の見直し

 今般、少子高齢化の進展に伴って介護分野のマンパワー不足が懸念される中、介護現場における業務の効率化は急務となり、その改善策の1つとして「行政が求める帳票」の作成に係る負担軽減が必要とされています。同時に、行政自体も限られた人員の中で指定権者や保険者の役割を果たしていくには職員の負担軽減が不可欠となっています。

 こうした中、負担軽減の一環として、2019年5月に実地指導の指導内容や実施方法の標準化と効率化を進める見直しが行われました(下図)。これにより、標準確認項目と標準確認文書を列挙してチェック事項が厳選された点、実地指導が半日になった点など、7つの変更点が盛り込まれたことは記憶に新しい変化だったのではないでしょうか。

[Ⅱ]介護分野の文書に係る負担軽減策の方向性

■介護文書の負担軽減策に係る全体像

 今回、見直しが検討されている指定権者や保険者と介護サービス事業者の間でやり取りされている介護分野の文書は「行政が求める帳票」として下記の3 つが該当します。

① 指定申請:人員・設備基準に該当することを確認する文書等

② 報酬請求:加算取得の要件に該当することを確認する文書等

③ 指導監査:指導監査にあたり提出を求められる文書等

 

 そして、負担軽減策としては下記の「3 つの手法」が該当し、単独で有益なものや複合的に関与するもの、ICT に関連する場合もあり、相乗的な効果が期待されています。

① 個々の申請様式・添付書類や手続に関する簡素化

② 自治体毎のローカルルールの解消による標準化

③ 共通してさらなる効率化に繋がる可能性のあるICT 等の活用

 

 これらの全体像は下図のように整理され、今年度から順次実施されていく予定です。

■介護文書の負担軽減策に係る「簡素化」の方向性

 「行政が求める帳票」の簡素化では、指定申請や報酬請求に係る提出時のルールや添付文書の省略が図られ、これまでよりも手間がかからない点が朗報だといえます(下図)。

■介護文書の負担軽減策に係る「標準化」の方向性

 標準化におけるポイントは、介護報酬上の各種加算の要件を満たす「根拠となる書類」が具体的に何を指すのかが各自治体の判断による差異が大きい点を改善するため、ガイドライン等による周知が図られて、自治体の差異の解消が期待されています(下図)。

■介護文書の負担軽減策に係る「ICT 等の活用」と関連ポイント

 ICT 等の活用は、簡素化や標準化がその前提である一方で、ICT 化を通じて簡素化・標準化が促進される側面もあり、ICT 対応は介護事業者の重要な課題だといえます(下図)。

 ICT 等の活用においては、上記の「行政が求める帳票」以外にもサービス提供に係る介護関連のデータベース(DB)の運用が推進されている点に留意しなければなりません。既に開始されている「介護DB」と「VISIT」を補完するDB として、リハビリ以外の加算や事業所の介護記録、ケアマネジャー等が行った利用者の状態評価のうち電子的に取得できる265 項目のデータを集約する「CHASE」が2020 年度から開始が予定されています(下図)。つまり、全面的なICT の導入が介護事業者に求められてきたといえるでしょう。

 介護関連DB の構築を進める理由は、データヘルス改革の一翼を担っているからです(下図)。介護DB とNDB(医療レセプト・特定健診等情報)との連結解析は2020 年10月に施行が予定され、患者や利用者のデータを集積しつつ、ビッグデータとして研究や開発に利活用し、最終的には治療や予防、サービス提供等への還元が期待されています。

 介護分野のデータヘルス改革は、「科学的介護」や「介護ロボット」をはじめ「AI 活用」が関与する生産性向上に直結する話題であり、今般の人材不足や働き方改革への対応を契機に、ICT 全般のインフラ整備の必要性が高まったといえます。

 介護事業者は、介護分野の文書に係る負担軽減策自体は朗報であるものの、ICT 対応の環境変化が迫ってきた点を認識し、早期に導入を検討することが大切です。その際、機器やツールがすべての問題を解決してくれる訳ではなく、それを使いこなす職員による継続的なマネジメントなくしては、効率アップができないことを忘れてはなりません。

▼今月号の考察

 今回は、「行政が求める帳票」作成に係る負担軽減策と、関連する介護分野のICT 全般のインフラ整備の方向性について確認しました。介護事業者においては、介護現場での効率化が期待される一方、ICT 化の整備が迫られた転換期である点を理解することが大切です。ICT 化の対応は、働き方改革への対応も念頭に入れて、補助金等を活用しながら対応していくことがポイントになるでしょう。以上、今後の環境変化に関する最新動向としてご参考にして頂ければと思います。

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