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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2020.05月号


「介護事業所等における事業継続と休業対応のポイント」

 今月号では、今般の新型コロナウイルス対策の一環で公表された厚労省や自治体の資料を参考に、「Ⅰ.介護事業所等における事業継続の確認ポイント」と「Ⅱ.介護事業所等における休業対応の確認ポイント」について整理していきます。新型コロナウイルス感染症は、罹患しても約8 割は軽症で経過し、治癒する例が多いとされている一方、高齢者や基礎疾患のある方は重症化するリスクが高いと報告されています。事業継続では感染対策の徹底が重要であり、休業対応の場合には利用者への代替サービスの確保とスタッフへの手当や休暇などのサポートが不可欠です。

【確認keyword】
「新型コロナウイルス対応状況チェックリスト(感染症防止対策・体制整備・利用者への対応)」「利用者の代替サービスの確保」「事業所向けの助成金・給付金」「スタッフに対する休業補償」

[Ⅰ]介護事業所等における事業継続の確認ポイント

■ 新型コロナウイルス対応状況チェックリスト【体制整備】

 介護事業所や介護施設では、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者等が集う場であるため、介護現場は他よりも感染が拡がりやすい状況にある点を再認識しなければなりません。介護事業所等では感染症防止対策や感染症発生に備えた体制整備を再確認し、適切な対応を図ることが重要です(下表)。特に衛生用品等の確保が困難な場合があれば、厚労省事務連絡4月14日発出の「サージカルマスク等の例外的取扱いについて」を参照して、再利用の消毒方法や代替品のポイントなどを確認しておきましょう。

■ 新型コロナウイルス対応状況チェックリスト【人的対応】

 今般、全国各地の医療機関や介護事業所等において、新型コロナウイルスの小規模な感染者集団「クラスター」の形成が散見されるようになり、その対策が問題視されています。とりわけ介護事業所等において流行を起こしやすい感染症は、内部で新規に発生することは稀であり、主に外部から持ち込まれているのが実状です。従って、スタッフだけでなく、利用者や来所者、委託業者も含めて、ウイルスを外部から「持ち込まない」ように留意し、常時マスクの着用と手指衛生を徹底することが感染対策の重要なポイントになります(下表)。そして、特に留意すべき利用者への対応においては、「濃厚接触」になりがちな利用者とスタッフの体調変化の確認を全員で徹底するよう意識づけしていくことが肝要です。マスクの着用は隙間が生じるなど着用方法が適切でない場合は感染予防効果が下がることから、正しい着用方法を再確認して実践していきましょう。

[Ⅱ]介護事業所等における休業対応の確認ポイント

■ 休業要請やスタッフ確保が困難な場合における「代替サービス」の確保

 感染拡大を防ぐための「休業要請」は都道府県・衛生主管部局の判断によるものとされ、休業する場合にはケアマネジャーや関係事業所等と連携し、利用者に対して必要な介護サービスの提供を確保することが望まれています。知事が休業を要請できる介護サービスは「デイサービス」などの通所型や「ショートステイ」などの短期入所型(施設サービスは対象外)があり、利用者の代替サービスを確保する際、現状を可視化した「サービス提供優先順位チェック表(下図)」があれば、優先すべき代替サービスの内容や必要なサポートが把握しやすく、円滑に他の事業所や別サービスへと移行できるでしょう。

■ 休業要請や売上減少に対する事業所向けの「助成金・給付金」

 新型コロナウイルス感染症が蔓延し、余儀なく休業要請を受けた場合、厚労省の「雇用調整助成金」と経産省の「持続化給付金」を活用できるケースがあります(下表)。この他、名古屋市では通所介護事業所に要請した2 週間の休業を補償する方針が固められる等、自治体独自の休業補償の例もあり、各位の状況毎に確認する必要があります。

 「雇用調整助成金」は、雇用の維持を図るためのスタッフに支給した「休業手当」に要した費用を一部助成する制度です。ただし、休業期間中の「休業手当」の額が平均賃金の60%を下回る場合には助成金が支給されない取り決めとなっています。新型コロナ対策として緊急対応期間(2020 年4 月1 日から6 月30 日まで)において、支給要件を緩和する特例措置が設けられ、通常よりも助成金が高くなるように考慮されている点がポイントになります。例えば、助成率は通常は4/5(中小企業)、2/3(大企業)ですが、助成率アップ要件に合致すれば、9/10(中小企業)、3/4(大企業)となります。また、販売量、売上高等の事業活動を示す生産指標の減少(10%以上の低下)の確認期間が3 ヶ月から1 ヶ月に短縮されています。助成対象労働者についても通常は6 ヶ月以上継続雇用された従業員ですが、今回の特例措置では新卒社員など継続雇用期間が6 ヶ月未満の労働者、雇用保険に加入していない週20 時間未満のパート等も対象となっています。

 他方、「続化給付金」は2020(R2)年度補正予算の成立を前提とし、概要は設計されていますが、詳細については4 月下旬以降に正式に公表される情報の確認が必要です。

■ スタッフに対する手当や休暇の「休業補償」のポイント整理

 「休業手当」の支払いや「年次有給休暇」の付与は、パート・派遣・有期契約労働者など、多様な働き方で働く方も含めて労働基準法上の労働者すべてが対象となります。

 仮に、スタッフが新型コロナウイルスに感染した場合、感染症法に基づき、都道府県知事により当該労働者に対して就業制限や入院の勧告等が行われ、事業所等ではスタッフを休ませる措置が必要です。知事の休業要請や自主的な病気休暇に対しては、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないため「休業手当」の支給義務はないとされています。しかしながら、使用者(経営者)の自主的判断で休業させる場合には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため「休業手当」を支払う必要があります。前述したように使用者(経営者)が「休業手当」を支給した場合、「雇用調整助成金」の受給を受けられるケースもあり、助成金で支給額を一部補填できる点がポイントになります。一方、被用者保険(健保)では「傷病手当金」要件を満たせば各保険者から支給され、業務内の感染であれば「労災保険」が適用となります(下表)。

 なお、併せて確認しておきたい休暇の取扱いは、発熱などの症状があるためスタッフが自主的に休む場合や自宅療養の際には、通常は「年次有給休暇」を利用し、各事業所等の就業規則に任意の「特別休暇」などの制度があれば活用できる形となります。経営者は福利厚生の充実とともに、スタッフの暮らしを守る正しい情報の理解が不可欠です。

▼今月号の考察

 今回は、新型コロナウイルス感染対策として介護事業所や介護施設におけるチェックポイントを確認し、休業対応のポイントを整理しました。介護現場では日頃からの感染防止策が功を奏し、感染拡大が抑制できていると推察され、スタッフ一人ひとりの意識づけにより、利用者の安全が確保されている状況です。感染対策に携われている現場の皆様方のご尽力に敬意と感謝を申し上げます。

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