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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2020.06月号


「科学的介護の実現に不可欠なCHASE の位置づけ」

 今月号では、2020 年5 月に稼働が開始された新たなデータベースと位置付けられる「CHASE」について、「Ⅰ.科学的介護データ提供連携サービスCHASE の概要」を整理し、「Ⅱ.CHASE の導入と運用、ICT 導入支援事業のポイント」を確認していきます。

 With コロナ時代の制度設計がコロナ対策中心になる中、データヘルス改革は引き続き推進が必要であり、事業継続とコロナ対策の両輪を回しながら変化に適合していくことが大切です。

【確認keyword】
「介護関連データベースにおけるCHASEの位置づけと特徴」「事業者間の連携に不可欠なインフラ整備」「CHASEの導入に向けた準備と実務的な運用」「ICT導入支援事業の活用」

[Ⅰ]科学的介護データ提供連携サービスCHASE の概要

■ 介護関連データベースにおけるCHASE の位置づけ

 今般、介護現場の抱える人材確保や生産性向上の課題を解決するため、科学的介護の実現に向けた介護関連データベース(下図)の整備が進められています。データベースの構築は、ビッグデータを解析して民間企業等の製品開発や研究を進め、イノベーションの創出に活用し、最終的に事業者や利用者に還元される構想です。介護事業者は2020年5月に稼働開始となった「CHASE」のポイントを押さえて準備していくことが大切です。

■ 科学的介護データ提供連携サービス CHASE の特徴

 現行の介護関連データベースでは、介護サービスに係る利用者の詳細な状態やケアの内容については把握できない状況となっています。それを補う科学的介護データ提供連携サービス「CHASE」は、介護ケアの内容や効果に係る利用者の情報の把握をするために構築された新たなデータベースと位置付けられます。「CHASE」は、介護保険総合データベース「介護DB」に収集されている要介護認定情報・介護レセプト等情報と、リハビリテーションに関するデータを収集する「VISIT」を補完し、栄養や認知症等に係る項目などの情報を収集し、その分析と評価が可能となる点が期待されています。

 「CHASE」のデータ収集の項目は、厚労省のモデル事業による課題検証を行いながら優先順位をつけて選定されました。その項目には「基本的な項目」、加算対象事業所などで入力される「目的に応じた項目」、各事業所で任意に入力される「その他の項目」が設定され、それぞれにおいて【総論】【認知症】【口腔】【栄養】の分類に区分けされています(下図)。「基本的な項目」と「目的に応じた項目」はすでに把握しているデータの提供(出力)でまかなわれる見込みですが、「その他の項目」はデータ化(入力)に労力を要する一方で、利用者・入所者の状態を把握するうえで重要な項目になるため、次年度介護報酬改定において新たな評価(加算)が組み込まれる可能性もあるでしょう。

 押さえておきたいポイントは、介護記録の作成や請求業務が「CHASE」対応へと標準化される中で、単なるデータ収集に留まらず、ケアマネジャーと各事業所間の情報共有における標準的な仕様(コード統一)へと波及し、事業者間の連携に不可欠なインフラ整備となっていく側面も期待され、実務的にも重要な位置づけであることがうかがえます。

[Ⅱ]CHASE の導入と運用、ICT 導入支援事業のポイント

■ CHASE の導入に向けた準備

 「CHASE」を利用するには専用サイトからの利用申請が必要です(下図)。「CHASE」では2 種類のユーザー登録を要し、まずは「管理ユーザー」が操作職員、記録職員、介護サービス利用者の登録を行います。その後、運用上の様式情報の入力関係は「操作職員」が行う形となります。導入の準備として、動作条件はシステムの導入前にご利用の機器の仕様などを確認する必要があり、「CHASE 導入手順書」をもとに準備を進めていきます。

■ CHASE の実務的な運用と今後の展望

 介護現場では、「CHASE」で収集するすべての情報について、新たに手入力を行うことは業務負担も大きく現実的ではありません。介護業務ソフトを導入している介護事業所等では、既に「CHASE」で収集する情報の一部はソフト上で電子化され、この情報をCSVファイルとして「CHASE」に取り込む機能を有しているため(未対応であれば改修あるいは対応ベンダーへの相談が必要)、介護事業所等における負担が少なくなります。

 具体的には、各事業所がインターネット回線にて「CHASE」専用サイトに接続し、介護業務ソフトから「CHASE」のクライアントアプリケーションに共通インターフェースを介することにより、CSV ファイルの取り込みが可能となります。CSV ファイル取り込み機能において取り込んだデータのうち、個人情報に該当するものは業務パソコン端末内のブラウザーに内蔵しているデータベース(IndexedDB)に保存され、個人情報以外の情報はインターネット回線にて「CHASE」のデータセンタにあるデータベースに登録する形となります(下図)。こうした介護業務ソフトから「CHASE」に連携する頻度は月1回程度が想定されています。「操作職員」の負担を考慮し、「CHASE」への必要なデータの自動抽出ができる設計となったことで、新たな負荷もなく安心して導入できるでしょう。

 こうしたデータ収集を進めてデータベースを構築する中、ビッグデータの解析が行われることで、介護事業者のパフォーマンスの良し悪しは介護報酬上のアウトカム評価と保険者に対する評価(財政的インセンティブ)に反映される計画となっています。さらにデータ解析の結果次第では、介護報酬上の評価(加算)だけでなく、例えば人員基準の緩和など、各サービスの基準見直しを図る裏付けとして将来的に用いられる可能性がある点も押さえておきたいポイントになります。

 そして、介護事業者におけるICT 化対応の取り組みは、利用者のQOL に直結し、社会資源となる介護データを取扱う重要性を再認識しなければなりません。一時的なシステムや機器の導入として片付けられる話ではなく、介護のICT 化やロボット等の推進により、介護現場の生産性向上や働き方改革の推進の一翼として活用される点を踏まえて、運用していくことが大切です。

 なお、国、指定権者・保険者及び介護サービス事業者の間でやり取りされている「指定申請・報酬請求・指導監査」の関連文書における簡素化・標準化・ICT 化が促進され、直近では「処遇改善加算と特定処遇改善加算に関する様式の一本化」が実施されています。こうした関連事項でもICT 化が重点課題となり、見直しが図られている状況です。

■ CHASE 導入の支援策「ICT 導入支援事業」の活用

 With コロナ時代の感染予防策として注目を集める、利用者と職員の接触を最低限に抑えるセンシング技術や遠隔ツールなどは、今般の人材不足や働き方改革への対応のみならず、ICT 全般のインフラ整備の追い風となり、必要性が高まってきたといえます。

 今回の「CHASE」対応のシステム改修など、介護現場へのICT化導入の支援策は、2020年度の地域医療介護総合確保基金における「ICT導入支援事業」に盛り込まれています。この事業では、介護事業所等における業務の効率化を通じてヘルパー等の負担軽減を図り、利用者に対して質の高いサービスを効率的に提供することを目的に補助金が設定され「CHASE」対応や導入効果の報告等が要件となっています。

 具体的な補助対象は、介護ソフト及びタブレット端末だけでなく、導入関連費用の一部も助成されます。そして、介護分野のICT化を全面的に進め、ICTを活用して介護記録から請求業務までが原則一気通貫で行うことができるよう、すべての介護保険サービスが対象となっています。注目ポイントは、前年度の30万円上限の補助金に対し、2020年度は事業所規模に応じて職員10人まで50万円、20人まで80万円、30人まで100万円、職員31人以上で130万円と上限額が大幅に増額された点です(下図)。

 ICT化への対応は介護事業所等における喫緊の課題であり、生産性向上のみならず、今後のWithコロナ時代を見据えた感染対策の一助として活用する視点も重要になります。介護分野のICT化はデータヘルス改革に不可欠であり、最終的に介護事業所等のサービスの質を高めることで利用者に還元され、社会的価値がある点を忘れてはなりません。

▼今月号の考察

 今回は5月に稼働開始となった「CHASE」の位置づけや重要性、導入や運用の概要について整理し、生産性向上や感染対策の一助として活用されるICT化に関するポイントなどを確認しました。

 介護現場では日頃からの感染防止策が奏功して感染拡大が抑制され、利用者の安全が確保されている状況であり、感染対策に携われている現場の皆様方のご尽力に敬意と感謝を申し上げます。

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