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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2020.07月号


「介護分野の新型コロナ対応支援と活用ポイント」

 今月号では、令和2 年度補正予算のうち介護分野に関わる新型コロナ対応の支援策について、「Ⅰ.介護分野の感染対策を考慮した支援策の拡充ポイント」と「Ⅱ.介護施設等における感染拡大防止の支援と対策ポイント」を確認していきます。

 介護事業者においては、第2 波に備えた新型コロナウイルス感染対策が改めて求められている点を理解し、各種支援をうまく取り入れながら感染対策の強化に取り組んでいくことが大切です。

【確認keyword】
「介護職員に対する慰労金の支給」「介護ロボット導入支援の拡充」「ICT導入支援の拡充」「介護施設等に対する感染拡大防止の支援」「多床室の個室化に要する改修費の補助」

[Ⅰ]介護分野の感染対策を考慮した支援策の拡充ポイント

■ 感染防止対策を講じて従事する介護職員に対する「慰労金」

 介護サービスは高齢者やその家族の生活を支え、高齢者の健康を維持する上で欠かせません。今般のコロナ禍における感染の重症化リスクが高い高齢者に対する接触を伴う介護サービスの実態を踏まえ、6月12日に成立した第2次補正予算では「感染症対策の徹底支援」を行いつつ、感染防止対策を講じて介護サービスの継続に努めている職員に対する「慰労金の支給」などが盛り込まれました(下図)。慰労金は非課税所得に位置づけられ、対象者は新型コロナウイルス感染症が発生又は濃厚接触者に対応した施設・事業所に勤務して利用者と接する職員に「20万円」、これ以外の施設等に勤務して利用者と接する職員には「5万円」の支給が決定され、8月頃に支給される見通しとなりました。

■ 感染予防を考慮した「介護ロボット導入支援」の拡充

 昨今、人材不足を補う切り札として介護ロボットの導入が推進され、各都道府県に設置された地域医療介護総合確保基金(以下、基金に略)を活用した「介護ロボットの導入支援」が実施され、令和2年度の当初予算では支援内容が拡大されました。こうした中、新型コロナウイルス感染症の発生によって職員体制の縮小や感染症対策への業務負荷が増えている現状を踏まえ、更なる職員の負担軽減や業務効率化を図る必要があると判断し、補正予算において介護ロボット導入支援の拡充が決定されました(下図)。

 今回の補正予算における介護ロボット導入支援の拡充は以下の4つの事項に注目です。

① 移乗支援・入浴支援ロボット導入に係る補助額引上げ →1機器あたり上限100万円

② 見守りセンサー導入に係る補助額引上げ →1事業所あたり上限750万円

③ 1事業所に対する補助台数の制限(利用者定員の2割まで)の撤廃

④ 事業主負担を1/2負担から都道府県裁量の設定に見直し(事業主負担は必須条件)

 これらのうち今回の拡充において押さえておきたいポイントは、対象となる介護ロボットが移乗支援・入浴支援・見守りセンサーに限定されて金額が大幅に増額された点です。限定された理由は、これらの介護ロボットは感染予防で推奨される3密を避けるうえで有効な非接触型であり、さらに慢性的な人材不足を補う手立てや働き方改革への対応の一助と期待されるからです。この他、確認しておきたいインパクトは、これまでの補助金は事業主負担が対象経費の1/2でしたが、都道府県の判断により自由な設定に改められた点です。基金は、地域の実情に応じた整備を目的として補助を実施しているため、導入を検討の際には各都道府県の補助率などの最新情報を確認する必要があります。

■ 感染予防の業務負荷を考慮した「ICT 導入支援」の拡充

 介護現場へのICT化導入の支援策は、令和2年度の基金における「ICT導入支援事業」に盛り込まれました。この事業では、介護事業所等における業務の効率化を通じてヘルパー等の負担軽減を図り、利用者に対して質の高いサービスを効率的に提供することを目的に補助金が設定され、科学的介護の実現を目指して5月から稼働された「CHASE」対応のシステム改修や導入効果の報告等が要件となっています。

 具体的な補助対象は、介護ソフト及びタブレット端末だけでなく、導入関連費用の一部も助成されます。そして、介護分野のICT化を全面的に進め、ICTを活用して介護記録から請求業務までが原則一気通貫で行うことができるよう、すべての介護保険サービスが対象となっています。注目ポイントは、今般の感染予防における業務負荷を考慮し、業務効率化や感染予防を強化していくため、令和2年度補正予算において補助上限額の倍額のほか、Wi-fi購入や設置費、勤怠管理等の介護ソフトも拡充された点です(下図)。

 ICT導入支援は、介護ロボット導入支援と同様に、基金の運営は各都道府県の裁量になっているため、補助率や割り当ての件数が異なる点に留意しなければなりません。導入を検討の際は、まずは介護業務ソフトを導入しているベンダーに確認を進めながら、「CHASE」対応も含めた業務全体の最適化を考えていくことが重要です。

 介護事業者における介護ロボットの導入やICT 化対応の取り組みは、システムや機器のハード整備として片付けられる話ではなく、介護のICT 化やロボット等の推進により、介護現場の生産性向上や働き方改革の推進の一翼となる点を踏まえて導入し、運用していくことが大切です。例えば「CHASE」をはじめ、介護データベースにおけるデータ解析の結果次第では、介護報酬上の評価(加算)だけでなく人員基準の緩和など、各サービスの基準見直しを図る裏付けとして将来的に用いられる可能性があります。さらには、介護事業者のパフォーマンスの良し悪しは介護報酬上のアウトカム評価と保険者に対する評価(財政的インセンティブ)に反映される計画となっている点にも注目です。

 ICT化への対応は介護事業者における喫緊の課題であり、Withコロナ時代を見据えた感染対策に欠かせないツールとして活用する視点も重要になります。感染対策は利用者や職員を守り、そして介護事業を継続するうえで必要不可欠になったといえるでしょう。

[Ⅱ]介護施設等における感染拡大防止の支援と対策ポイント

■ 介護施設等に対する感染拡大防止の支援の必要性

 全国各地で介護施設のクラスター(感染者の集団)が相次いで発生する中、多くの施設では感染の危機に直面し続けている状況です。クラスターが確認された施設の実例では、感染が利用者だけでなく職員にも一気に拡大し、死のリスクに直面するとともに、濃厚接触者となった職員が出勤できなくなり、しまいには感染を恐れて出勤を控える職員も出るなど、クラスターによる人材不足に陥る点が大きな問題となっています。

 そして、介護クラスター特有の傾向としては、医療機関において感染した入所者の治療以外の介護まで手が負えない点、認知機能の低下が見られる入所者ではマスクや手洗いなど感染予防の励行が難しい点、生活に欠かせない食事や入浴の介助そのものが感染リスクとなる点など、介護施設等の感染対策の難しさが明らかになり、一度クラスターが発生すると負の連鎖が起きるリスクも分かってきました。さらに追い打ちをかけたのが地域における治療の受け入れ態勢の逼迫です。本来であれば、重症化しやすい高齢者は軽症でも入院が原則であるものの、地域の相次ぐ感染者の増加により医療機関でも重症者以外は受け入れる余裕がない医療崩壊のリスクが高まり、軽症の入所者を施設内で診療と介護を続けざるを得ない状況は他人事ではない深刻な実態だといえるでしょう。

 こうしたクラスターの発生が、自施設のみならず地域全体に深刻な影響を及ぼす点を鑑み、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、基金を活用した介護施設等へ感染拡大防止の各種支援が盛り込まれました(下図)。介護施設等においてはこれらの支援を有効活用して、感染対策を強化していくことがポイントになります。

■ 多床室の個室化に要する改修費補助と連携体制づくりのポイント

 介護現場は、介護そのものが密着する機会が多く、3 密を防ぐ新しい生活様式を取り入れにくい状況であり、クラスター対策が喫緊の課題となっています。特に介護施設は3 密を避けにくい構造であり、感染拡大が比較的落ち着いている今のうちに対処しなければ危機的な状況に陥りかねない側面があります。こうした実態を考慮し、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金として、介護施設のみならず入所系サービスも対象とした多床室の個室化に要する改修費を補助する支援が盛り込まれました(下図)。

 介護施設等は感染症の治療そのものに限界があることから、感染した入所者の受け入れ医療機関への連携体制づくりの打診が早急に必要です。そして、受け入れが困難な事態に陥ることも想定した医師や看護師等によるチーム医療の協力体制、さらには職員が感染したり濃厚接触者になった場合に人材不足に陥っても継続できる連帯関係を確認していくことも大切です。連携体制の仕組みづくりでは、利用者の受け入れ先になり得る高齢者住宅などの類似サービスとの関係構築や、地域の垣根を越えた関係強化をしていくことが、予期せぬ災害時にも応用でき、事業継続の重要なポイントになるでしょう。

▼今月号の考察

 今回は介護分野に関わる新型コロナ対応の支援策や感染拡大防止の対策ポイントを確認しました。新型コロナウイルス対策は、社会経済活動の再開とともに第2 波に備えた感染対策へとステージが変わり、介護事業者は各種支援を有効活用した更なる対策が求められています。以上、事業継続に欠かせない感染対策の強化に向けた最新情報としてご参考にして頂ければ幸いです。

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