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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2020.10月号


「感染対策×働き方改革×ICT 関連の助成金活用」

 今月号では、今般のコロナ禍における介護崩壊のリスクを鑑みて、介護経営の安定化の鍵を握る「Ⅰ.介護崩壊を打開する感染対策×働き方改革×ICT 活用」を確認し、「Ⅱ.感染対策×働き方改革×ICT 関連の助成金のポイント」について整理していきます。
 返済不要の助成金・補助金の受給は金銭的なメリットのみならず、新たな取り組みを始めたり、取り組みを強化するキッカケとして最適であり、上手に積極的に活用していくことが肝要です。

【確認keyword】
「介護サービスが提供できない新たな問題に直面」「介護崩壊の連鎖が経営の懸念事項」「労務管理のチェックポイント」「感染対策×働き方改革×ICT関連の助成金活用のポイント」

[Ⅰ]介護崩壊を打開する感染対策×働き方改革×ICT 活用

■ 感染対策と働き方改革に対応したICT ツールの活用

 昨今、高齢化の進展に伴って介護ニーズが年々増加する中、介護サービスの提供を担う人材の確保と育成が大きな課題となっていました。これは、機械では代行することができない人手が必要な労働集約型産業の特徴だといえます。その一方で、この半年余りに及ぶコロナ禍により、人手が欠かせない労働集約型産業の特有の問題として、密になりがちな介護サービスの提供ができない新たな問題に直面する事態となっています。

 相次ぐ介護クラスターとその報道により、サービスを敬遠する利用者も多く、サービスの利用控えによる売上減少とともに、感染を恐れるスタッフや仕事のないパートスタッフの離職が進む悪循環に陥るケースも少なくありません。さらには、サービス提供が再開となったときに必要な人材が足りないという「介護崩壊(利用受入れの中止、スタッフの離職、事業所の休止、倒産等)」の連鎖が経営の大きな懸念事項となっています。

 こうした事態を打開していくには、経営者はスタッフの安定的な雇用につながる「働き方改革」への対応を起点に、コロナ禍における「感染対策」の徹底が重要です。さらに3 密を避けた非接触型サービスや業務効率化を図る「ICT 活用」を付加することは、労働環境の改善やサービスの質向上、利用者やスタッフを守るうえでも不可欠であり、これら3 つに関連する助成金の活用が介護経営の安定化の鍵を握るでしょう(下図)。

■ 労務管理に関するチェックポイントと働き方改革への対応

 「感染対策」や「働き方改革」の実践や「ICT ツール」の導入にあたり、大切なポイントは労働環境を改善して足元をしっかり固めていくことです。まずは、現状確認として下記の10 項目の基本的な労務管理の状況をチェックし、問題点を見える化していきましょう。労務管理は「やっていて当たり前」のことですが、重要なポイントはコロナ禍の現状に適応できているかの再確認です。コロナ禍のわずか半年余りで今までの常識が一変したことも少なくなく、現状にそぐわない事項があれば見直す必要があります。

 労働環境の改善や生産性の向上の早道は、他力本願ではなく、自らの「働き方改革」の確実な実行が鍵を握っている点を押さえ、労使が協同して取り組んでいかなければなりません。新たな取り組みに不安や悩みなどがあれば、労務管理の専門家による個別相談や援助体制等が強化された「働き方改革推進支援センター」を活用していきましょう。

[Ⅱ]感染対策×働き方改革×ICT関連の助成金のポイント

■ コロナ関連助成金の概要とポイント

 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業では、下表の4つの支援が盛り込まれ、これらの慰労金や助成金を受給するには、申請額を積み上げて申請書等を作成し、各都道府県の所定の様式を用いて申請する必要があります。申請先は今回の入金(振込)の担当窓口となった介護報酬の振込口座を管理する「国保連」に対し、インターネットによる申請が原則となっています。「国保連」への申請は介護サービス施設・事業所の指定を受けた事業者に限られ、1月15日以降に介護報酬の請求実績があれば申請が可能です。

 さらにコロナの影響により、売上減少による事業活動の縮小を余儀なくされた場合に該当しやすい助成金・給付金にも注目です。「雇用調整助成金」は従業員の雇用維持を図るために雇用調整(休業手当の支給)を実施した補填として活用できます。そして「持続化給付金」と「家賃支援給付金」は、春の第1波、夏の第2波に該当しなくとも、今秋冬の流行により、緊急事態宣言や休業要請、介護クラスターの発生などに起因し、売上減少に直面した場合に活用できるため、改めてポイントを押さえておきましょう。

■ 働き方改革関連助成金の概要とポイント

 働き方改革は2019 年度より順次施行されています(下表)。法的措置だから仕方ないとネガティブに考えるより、労働者のライフスタイルに適応した労務管理や福利厚生へと見直しを図り、職場環境をリフレッシュするものだとポジティブに考えるのが賢明だといえるでしょう。中小企業においては、来年4 月に適用となるパート社員の給与に関係する「同一労働同一賃金」への対応が迫ってきた点に留意しなければなりません。

 雇用関連の助成金は、細分化されたコースも含めれば50種類以上に及び、改善したい目的に合致すれば活用しやすい助成金です。特に「働き方改革」への対応や「介護職員等特定処遇改善加算」と併せて活用できる助成金を確認しておきましょう(下表)。

■ ICT 関連補助金の概要とポイント

 介護分野ではデータヘルス改革の一環で「科学的介護」が推進される中、介護事業所等における介護ロボットの活用やICT 対応は業務の効率化を図ることができ、労働力不足を補う手立てとして期待されています。「ICT ツール」の活用は、即戦力や抜本的な改善を見込むことは現状では難しいものの、コロナ禍における感染拡大防止において有効な面も多く、非接触型サービスの推進や人手を掛けなくても補完できる業務の穴埋めとして欠かせないツールであることを再認識し、導入を検討することが大切です。そして、「感染対策」と「働き方改革」の推進を加速させる一助として活用するのが外せない着眼点になります。「ICT ツール」導入の検討においては、現場スタッフの意見を聴き入れることが不可欠であり、現状の問題点と改善策などを全員で話し合う場を設けることができれば、導入の有無に関わらず、組織力を高める有意義な意見交換ができるでしょう。

 ICT関連補助金は申請時期や予算枠が限られているため、最新動向を踏まえながら導入の検討を進めることが肝要です。制度的な動向としては、データヘルス改革では「科学的介護」の実現に向けて、2021年4月からVISITとCHASEの一体的なシステム運用が始まり、2021年度介護報酬改定における評価(加算および要件)が注目されており、VISITやCHASEの導入は対応できる介護ソフトやシステムベンダーの選定が重要なポイントになります。

▼今月号の考察

 今回は、介護経営の安定化の鍵を握る「感染対策×働き方改革×ICT 活用」の3 つの要素について、助成金のポイントを整理しました。介護経営に欠かすことのできない労務管理に関するチェックリストで足元を固めつつ、返済不要な助成金・補助金を上手に積極的に活用していきたいものです。以上、介護経営に欠かせない重要な勘所として、ご参考にして頂ければ幸いです。

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