ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2022.03月号
「社会福祉連携推進法人のポイント整理(前編)」
今月号では、2022 年4 月に施行される新たな法人制度として、「Ⅰ.社会福祉連携推進法人制度の概要と運営形態」と「Ⅱ.社会福祉連携推進法人の位置づけと役割」を整理していきます。社会福祉連携推進法人は、リーダーシップを発揮する社会福祉法人に限らず、すべての介護事業者に関わる新たな互助組織の仕組みであり、地域の介護基盤の強化として注目される話題です。
【確認keyword】
「社会福祉法人を始めとする福祉サービス事業者間の互助組織」「安定的にサービスを提供するうえでの選択肢」「法人間の連携と合併の中間的な手法と位置付けられて制度化」
[Ⅰ]社会福祉連携推進法人制度の概要と運営形態
■ 社会福祉連携推進法人は地域の互助組織
社会福祉連携推進法人は、社会福祉事業を営む社会福祉法人を中心に、その他の法人も社員となることができ、参画する社員の法人経営のバックアップを主たる目的とした互助組織と位置付けられます(下図)。連携推進法人になるには、社会福祉連携推進業務の6 つのうち1 つ以上の業務を行う必要があり、法人の創意工夫に基づき、多様な運営形態で行われることが許容されています。例えば、「地域福祉支援業務」を中心に市区町村域において分野を超えて様々な法人が連携支援を行うタイプもあれば、「人材確保等業務」を中心に都道府県域等において特定の分野の法人が広域的に連携するタイプなどの運営が可能です。さらにはタイプの違う複数の法人に参画することも可能であり、単独ではできない業務を補うことができ、地域福祉の一層の推進として期待されています。

連携推進法人の社員に参画できる範囲は、「①社会福祉法人」「②社会福祉事業を経営する法人」「③居宅介護支援事業や有料老人ホームを経営する事業等、社会福祉を目的とする福祉サービス事業を経営する法人」「④介護福祉士養成施設や社会福祉士養成施設、保育士養成施設、初任者研修実施機関等、社会福祉事業等従事者を養成する機関(学校を含む)を経営する法人」となっているため、社会福祉法人だけに限定されず、広く介護サービスを手掛ける法人が関与できる新たな地域の枠組みとして注目されています。
社会福祉連携推進法人の運営に欠かせないのが「社員総会」を中心とした「理事会」と「社会福祉連携推進評議会」の組織になります(下図)。「社員総会」は法人運営に係る重要事項の意思決定機関と位置付けられ、「理事会」は業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、代表理事の選定及び解職を担い、「社会福祉連携推進評議会」は連携推進法人の意見具申・評価機関として理事会の決議に基づき代表理事が招集されます。法人ガバナンスのルールは下図のように整理されています。


■ 社会福祉連携推進法人の運営形態
連携推進法人の認定を受けるには、2 つ以上の法人が社員として参画し、社会福祉法人が過半数を占める必要があります。連携推進法人は、参画する社員の法人経営をバックアップするための業務を行う法人であり、複数の法人が寄り合うスケールメリットを活かしつつ、様々な支援を提供するものであることから、大規模な法人だけに関わる組織体でなく、むしろ小規模な法人が参画して経営基盤を強化する手段となり得ることが期待されています。連携推進法人に参画するか否かは、各法人の判断であるとともに、途中脱退の自由も確保されています。社会福祉法人の有無や規模の大小に関係なく、地域のすべての介護基盤の連携体制に関与していく可能性があるため、連携推進法人に関する地域動向には注視していく必要があり、話題性が増していくと思われます。
連携推進法人においては、地域住民等に対する直接的なサービス提供は想定されず、互助組織として社会福祉連携推進業務等の実施に携わります。連携推進法人の業務運営は参画する社員(各法人)からの会費等の徴収によって賄われます。会費を支出した連携推進法人の社員は社会福祉連携推進業務等を通じて様々な支援を受けることが可能になります。会費の金額等について一律の基準を定めるものではないとされ、連携推進法人のガバナンスの下、会費等の徴収について定款に根拠を置くとともに金額等については社員総会での議決を必要とし、民主的な意思決定の下で設定されるものだと明示されています。連携推進法人の業務に従事する職員については、連携推進法人として雇用することが可能であり、社員から徴収した会費等により、当該職員に係る人件費を賄う形となります(下図)。

[Ⅱ]社会福祉連携推進法人の位置づけと役割
これまでの社会福祉法人等における連携方策には、個々の自主的な連携、社会福祉協議会を介した連携、あるいは合併・事業譲渡があります。法人間の自主的な連携や社会福祉協議会を介した連携では連携の度合いが低く、一方、合併・事業譲渡では連携の度合いが強すぎる側面がありました。社会福祉連携推進法人は、法人間の連携と合併の中間的な手法と位置付けられ、新たな選択肢として制度化された区分になります(下図)。

連携推進法人は、参画する社員の経営をバックアップすることを主たる目的とした、社会福祉法人を始めとする福祉サービス事業者間の互助組織であり、次の6 つの社会福祉連携推進業務の1 つ以上を行い、各連携推進法人の創意工夫に基づき、福祉サービス事業者間の連携・協働を図りながら、多様な取り組みを自由に行うことができます。

具体的には、連携推進法人の6 つの社会福祉連携推進業務を通じて、同じ目的意識を持つ法人が個々の自主性を保ちながら連携し、地域特性に応じた創意工夫ある新たなサービスの創出や、福祉人材の確保とともにその働きやすい職場環境の整備、物資調達の効率化など、規模の大きさを活かした多様な取組が促進され、地域福祉の一層の推進、社会福祉法人の経営基盤の強化等に資することが期待されています。
連携推進法人は、地域住民の多様な福祉ニーズに対応し、地域共生社会の実現を図っていくため、そして今後の人口減少や共同体機能の脆弱化といった地域ニーズの変化に対応し、安定的にサービスを提供するうえでの選択肢となります。各介護事業者においては、法人間の競争から連携重視の時代へと変化する中で、連携推進法人の役割が持続可能な法人経営の確立に寄与する「地域づくりのプラットフォーム」であると認識し、その地域動向に注目していきましょう(下図)。

▼今月号の考察
今回は、2022 年4 月に施行となる社会福祉連携推進法人制度の概要を確認しました。連携推進法人は、リーダーシップを発揮する社会福祉法人のみならず、すべての介護事業者に関わる新たな互助組織の仕組みであり、さらには大規模な法人だけに関わる話題でもなく、むしろ小規模な法人が参画して経営基盤を強化する手段となり得ることが注目される理由の1 つです。
次号の後編では、社会福祉連携推進法人の設立の起点となり、連携推進法人の特徴や持ち味となる「6 つの社会福祉連携推進業務」のポイントを整理していきます。以上、介護経営に関わる最新情報の理解を深める一助として、今後の取り組みにご活用いただければと思います。
・本資料は情報提供のみを目的としたものであり、いかなる取引の勧誘或いは取引を確認するものではありません。
・本資料に記載された内容は、現時点において一般に認識されている経済・社会等の情勢および当社が合理的と判断した一定の前提に基づき作成されておりますが、当社はその正確性・確実性を保証するものではありません。また、ここに記載されている内容は、経営環境の変化等の事由により、予告なしに変更される可能性があります。
・本資料のご利用並びに取り組みの最終決定に際しましては、ご自身のご判断でなされますよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士などにご相談の上でお取り扱い下さいますようお願い致します。
・当社の承諾なしに、本資料の全部または一部を引用または複製することを禁じます。
★「ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」2022.03月号」(PDF形式)のダウンロードは こちら から
■ 提供:株式会社 医療経営研究所