ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2022.05月号
「介護ロボット・ICT 導入支援補助金のポイント整理」
今月号では、2022 年度の介護分野における国家予算の配分について、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料を踏まえ、「Ⅰ.地域医療介護総合確保基金に係る2022 年度の方向性」を確認し、「Ⅱ.介護ロボット・業務改善・ICT 導入に係る補助金の概要」を整理していきます。
なお、補助金の有無をはじめ、補助率や対象枠、募集時期などの詳細は、各都道府県の地域医療介護総合確保基金の最新情報を確認する必要があります。補助金の活用をご検討の際には、前年度の募集に係る時期や内容等を踏まえながら、担当部署に早めに相談していくことが重要です。
【確認keyword】
生産性向上に寄与するICT基盤の整備」「見守りセンサーの情報と介護記録のシステム連動」「LIFEデータの活用に関わるICT導入」「生産性向上ガイドラインに基づく業務改善」
[Ⅰ]地域医療介護総合確保基金に係る2022 年度の方向性
我が国の高齢化は、世界に例を見ない速度で進行し、介護人材不足が大きな課題となっています。介護分野の人材確保の施策を強化する一方、限られたマンパワーを有効に活用する解決策の1 つとして、高齢者の自立支援を促進し、質の高い介護を実現するためのロボット・センサー等の活用が期待されています。昨今の新型コロナウイルス感染症の発生により、新たな生活様式が求められている中で、とりわけ見守りセンサーやICT、非装着型の移乗支援などの非接触対応における効果的なテクノロジーが脚光を浴びる形となり、介護現場では以前よりも活用の機運が高まってきたといえるでしょう。
2022 年度の地域医療介護総合確保基金に係る予算は、前年度と同額の824 億円(うち国費549 億円)が計上されました。これにより介護離職ゼロの実現に向け、介護の受け皿50 万人分の整備に向けた施設整備、多様な人材の参入促進や介護ロボット、ICT 等の導入を通じた労働環境の改善等による介護人材の確保が引き続き推進されていきます。
本編では、多岐に亘る予算のうち、生産性向上に寄与するICT 基盤の整備の一環として活用できる【1】介護ロボット導入支援事業、【2】ICT 導入支援事業、【3】業務改善支援事業などのポイントを整理していきます(下図)。これらはICT 基盤の整備に沿った「科学的介護」の推進も視野に入れて活用を検討していくことがポイントになります。

[Ⅱ]介護ロボット・業務改善・ICT 導入に係る補助金の概要
【1】介護ロボット導入支援事業のポイント
「介護ロボット導入支援事業」はこれまで年々拡充されてきましたが、2022 年度は従前と同じ内容にて実施されます(2023 年度までの時限措置)。導入補助額(1 機器あたり)は移乗支援と入浴支援が上限100 万円(それ以外は上限30 万円)、見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備に対しては上限750 万円と設定されています。補助率は、都道府県の裁量により設定され、導入計画書において目標とする人員配置を明確にした上で、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフト等の複数の機器を導入し、職員の負担軽減や効率化などの一定の要件を満たした場合は3/4(それ以外は1/2)を下限に設定できます(下図)。なお、この介護ロボット導入支援と【3】の業務改善支援との効果的な組み合わせを推進する都道府県もありますので、検討の際は担当部署への確認が必要です。

また、関連する「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業」では、2022 年度に相談窓口を全国17 箇所、リビングラボは8 箇所において、介護ロボットを導入しようとする介護施設等に対する研修会や個別の伴走支援を行う予定としています。介護現場では「どの種類の介護ロボット等を選んでよいのかわからない」、「現場が忙しく業務改革に取り組めない」といった声も少なくないため、外部の相談窓口の客観的なアドバイスを聞き入れて機器の選定・導入検討を進めていくことがポイントになります。

【2】ICT 導入支援事業のポイント
「ICT 導入支援事業」では、2019 年度から業務効率化を通じた職員の負担軽減を図ることを目的として、ICT 機器やソフトウェアの導入支援が行われてきました。2022 年度においては、ICT 導入計画で文書量を半減にすることやケアプランデータ連携システム(LIFE データの活用)の利用を要件に加える拡充が行われる点に注目です(下図)。
ケアプランのデータ化は、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で、持ち込みや郵送・FAX など紙媒体でやり取りされている点や、ケアプランには利用者の氏名、住所や要介護度、生活上の課題などのデータを安全にやり取りするための連携基盤が一部を除きほとんど整備されていないため、標準仕様の実装が進んでもその利活用が進まない点を改善する狙いがあります。ケアプランのデータでの授受が推進されることにより、これまで移動や郵送等に要していた時間や自動転記による実績データの手入力に割く時間の大幅な削減等が進むことが期待されます。システム導入を検討する際には、LIFEとの連動や互換性なども視野に入れて、ベンダーを選定することが重要になります。

【3】介護事業所に対する業務改善支援事業のポイント
総合的な介護人材確保対策が不可欠となる中、介護事業所等においては人材確保に直結する処遇改善に加え、職員の負担軽減を図り、効率的な業務体制を築いて生産性を向上させていくことが、サービスの質の維持・向上を図るためにも必要となっています。厚労省では介護現場における生産性向上の取り組みを支援するために、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」などの各種ツールの作成を行っています。
2019 年度から地域医療介護総合確保基金において、介護ロボットの効果的な活用等の業務改善の取り組みを支援するため、「介護事業所に対する業務改善支援事業」が設けられました。本事業では、生産性向上ガイドラインに基づき業務改善に取り組む介護事業所に対して、タイムスタディ調査による業務の課題分析等を支援するための経費の補助や、先進的な事例などの情報共有がなされてきました。
2022 年度は、これまでの全国数ヵ所のパイロット事業を踏まえ、すべての都道府県において、地域における介護現場の課題に即した対応方針を策定するための「介護現場革新会議」が開催される形となります。これに基づく取り組みが積極的に行われるよう、必要な情報がとりまとめられて発信される予定です。具体的には、タイムスタディ調査による業務の課題分析等を行うに当たり、コンサル等の第三者が支援するために必要な経費の補助額は対象経費の1/2 以内(上限30 万円)や、都道府県での「介護現場革新会議」の開催にあたり必要と認められる経費に対する補助が盛り込まれます(下図)。
関連事項としては、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、賃金の引上げを支援する「業務改善助成金(労働局)」の活用も押さえておきたいポイントになります。

【その他】介護施設等の大規模修繕に係る支援
2022 年度予算では、介護現場の生産性向上を推進するため、介護施設等の大規模修繕(おおむね10 年以上経過した施設の一部改修や付帯設備の改造)の際にあわせて行う介護ロボット・ICT の導入が補助対象に追加されました(2023 年度まで実施予定)。補助対象となる経費は「介護ロボット導入支援事業」及び「ICT 導入支援事業」において対象となっている機器等を導入するための必要経費(介護ロボット・ICT 以外の設備整備、人材募集・研修に係る経費等は対象外)となり、「介護施設等の新規整備を条件に行う広域型施設の大規模修繕・耐震化整備」と併せた補助実施も可能となっています(下図)。

この他、介護施設等の同一法人における「新規整備」と、老朽化した特養等の「広域型施設の大規模修繕・耐震化」を同時に進める補助金(最大補助単価1 定員あたり112.8万円)も組み込まれています。介護施設等の新規整備は、既存の広域型施設と同一敷地内や近隣に限定されない場所でも可能であり、広域型施設の大規模修繕は定員30 人以上で概ね10 年以上経過した施設の一部改修や付帯設備の改造等とされ、耐震化も含まれます。これらは施設整備の計画に関与するため、該当する場合は早めの相談が不可欠です。
▼今月号の考察
今回は、2022 年度予算に関連する各種支援事業のポイントを整理しました。介護ロボットやICT 機器は、導入後に円滑な運用ができるよう、可能な限り実機での検証を実施し、操作性を見極め、利用者にとって効果があるか、安全性に問題がないか等の確認が欠かせません。そして、経営者・管理者・現場担当者が納得した選定ができるよう、各々の立場での優先事項を確認し合うことが重要です。以上、今後の取り組みの強化として、ご参考にして頂ければと思います。
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