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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2022.10月号


「ケアプランデータ連携システムの活用と必要性」

 今月号では、介護保険最新情報 Vol.1096(2022 年 9 月 6 日)において、2023 年 4 月からケアプランデータ連携システムが本稼働になると明らかになった点を踏まえ、「I.介護分野におけるICT活用の必要性と今後の展望」と「II.ケアプランデータ連携システムの重要性とメリット」を整理していきます。ケアプランデータ連携システム自体は、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所に関係するシステムですが、入居・入所前の利用者情報のデータ共有として施設サービスにも連動される可能性が高く、すべての介護事業者が押さえておきたい情報といえるでしょう。

【確認keyword】
「介護分野におけるICT活用の必要性」 「現行のFAXや手渡し等によるやり取りの改善」 「ケアプランデータ連携システムの重要性とメリット」 「ICT導入支援補助金との関連性」

[Ⅰ]介護分野における ICT 活用の必要性と今後の展望

 介護現場におけるICT活用は、従来の紙媒体での情報のやり取りを抜本的に見直し、介護現場のインフラ整備として導入が推進されています。介護分野のICT化は、介護職員が行政に提出する文書等の作成に要する時間を効率化し、介護サービスの提供に集中するうえでも重要です。そして、間接的業務もICTを活用することにより、業務の効率化や職場環境の改善などの生産性の向上が働きやすい環境作りにつながり、介護業界のイメージを刷新し、介護分野への多用な人材の参入促進になることが期待されています。

 介護現場の情報を ICT 化することにより、ビッグデータの蓄積が可能となり、科学的 裏付けに基づく介護サービスの提供を促進することにもつながります(下図)。「科学的 介護推進システム(LIFE)」は、介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っ ているケアの計画・内容などを分析し、当該施設等にフィードバックがなされる情報シ ステムであり、介護事業者における PDCA サイクルを活用するためのツールと位置付けら れます。今回のテーマである「ケアプランデータ連携システム」も科学的介護を推進す る一翼を成し、事業所内外の情報共有の円滑化に不可欠な仕組みとして導入されます。

[II]ケアプランデータ連携システムの重要性とメリット

■ ケアプランデータ連携システムの概要と導入の重要性

 介護人材の確保が喫緊の課題とされる中で、介護現場の負担軽減や職場環境の改善を進めていくことは必然の取り組みであり、介護分野における業務効率化を図るために、 ICTを活用した情報連携が推進されています。そこで、介護現場の負担軽減の取り組みを 加速させるため、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で交わされるケアプラ ンデータ連携を実現する「ケアプランデータ連携システム」を公益社団法人 国民健康保 険中央会(以下「国保中央会」に略)が構築し、2023年2月から試行的な運用を開始して、 2023年4月に本稼働していく計画となっています。

 「ケアプランデータ連携システム」は、これまでFAXや郵送でやり取りしていたケアプ ランやサービス提供表・実績の転記などを国保中央会のシステムを介してやり取りをす る仕組みであり、ケアプランを送信する「居宅介護支援事業所」と、これを受け取る「介 護サービス事業所」に関係するシステムとなります(下図)。これにより、現行のFAXや 郵送、手渡し等の紙媒体によるやり取りや実績データの手入力の手間が省けるほか、転 記ミスもなくなり、これらに掛かるコストや時間が大幅に軽減されることになります。

 連携システムでは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で毎月やり取りさ れる居宅サービス計画書、サービス利用票(予定・実績)等について、事業所間でデータ連携するための標準仕様が構築されます。標準仕様を活用してデータ連携をすること で、介護事業所の文書作成に要する負担が大幅に軽減されることが期待されています。 運用面においては、データ連携のための標準仕様が採用されたことで、異なるベンダー 同士であってもデータ連携が可能となり、円滑な情報共有ができるようになります。

 そして、「ケアプランデータ連携システム」による統一基盤のもとで、科学的介護を推 進するため「科学的介護推進システム(LIFE)」と連動し、提供情報やフィードバック情報のデータ共有に活用される可能性が高まり、質の高い介護の実践につながる取り組みが一層推進されると予想されます。したがって、2024年度介護報酬改定における評価や 義務化の可能性も見据え、これからの介護DX時代のインフラ整備の一環として導入が欠 かせない点、業務の効率化や職場環境の改善などの生産性の向上にもつながる点を理解 して、導入に向けた準備を進めていくことがポイントになるでしょう。

■ ケアプランデータ連携システム活用の効果とメリット

 「ケアプランデータ連携システム」を活用した効果として、サービス提供票や居宅サービス計画書などのデータ連携により、FAXや郵送などでやりとりしていた書類をシステム上でデータの送受信ができるようになり、業務の効率化が図れます。記載時間や転記誤り、データ管理の文章量、職員の負担が軽減されるため、その労力や時間を利用者支援の向上に活かせます

 そして、書類作成や訪問に係る業務負担の軽減は、経費の削減にも直結し、調査研究の結果(全国平均の見込み金額)によれば、年間81万6,000円のコスト削減効果も期待できる面にも注目です。さらにコスト削減による相乗効果として介護人材の新規確保・定着率向上に寄与する側面もありま 。実際の経費や労力を洗い出し、改善点を見える化すれば、システム導入の効果が目算できるでしょう。

■ ケアプランデータ連携システムの業務フローと導入準備

 運用面においては、介護事業所が安全な環境で効果的にデータ連携を可能とするため、「ケアプランデータ連携クライアント」からインターネット回線を経由し、「ケアプラン データ連携基盤」を通して事業所間のケアプランデータのやり取りを行うことになります。システムを利用してケアプランデータを送受信する場合は、送る側と受ける側の双 方がシステムを導入する必要があります。システムを利用するには「ケアプランデータ 連携システム」のWEBサイトより利用申請を行い、「ケアプランデータ連携クライアント」 ソフトを国保中央会のWEBサイトよりダウンロードして、介護事業所のパソコンにインス トールをします。ケアプランデータを送信するには電子証明書が必要となります。

 連携システムの本稼働は2023年4月が予定され、稼働後も必要となる機能を随時修正し、 国保中央会の提供する連携システムを介護ベンダーが利用できる機能が追加されていく予定です。システム利用の費用は介護報酬請求から利用料を差引する精算(既存システムとの連携機能の追加)が想定されています。システム導入を検討の際は、次期介護報 酬改定を控えた2024年3月までが導入を決断する適当なタイミングとなり、ベンダーの対 応時期の確認をはじめ、多機能化するシステム対応の現状を洗い出し、今後の展望も併 せて再考していくことが肝要です。介護DX時代が幕明けし、変革期に突入する今、システムの入替やベンダーの選定・変更も含めて、システム導入の効率化を再検証する絶好の機会であり、導入後の運用も見据えていくことが導入に向けた重要な準備となります。

■ ICT 導入支援事業におけるケアプランデータ連携システムの拡充

 ICT導入支援事業では、介護サービス事業所のICTを活用した業務効率化を推進して、職員の負担軽減を図ることを目的に、各都道府県に設置されている地域医療介護総合確保基金を活用し、ICT化に対する導入支援が実施されています。具体的な導入支援として、 介護事業所・施設での介護ソフトやタブレット等の情報端末、Wi-Fiルーター等の機器購 入の費用を補助するものであり、各都道府県が独自の募集期間を設定しているため、補 助金を活用するには最新情報の確認が欠かせません。

 今回の連携システムの本稼働に向けて、2022年度のICT導入支援事業では補助割合 (3/4)の要件に「ICT導入計画で文書量の半減」と「ケアプランデータ連携システムの 利用」が追加となりました。さらに、2023年度のICT導入支援事業においては「補助上限 額の増額」と「補助割合(3/4)の一部拡充」のほか「ケアプランデータ連携システムの 利用における拡充」も予定(概算要求を踏まえて年末の予算編成で決定)されています (下図)。こうしたシステム導入を後押しする支援が新たに設けられる点にも着目して、 「ケアプランデータ連携システム」の本稼働に向けて準備を進めていくことが大切です。

▼今月号の考察

 今回は、2023 年 4 月から本稼働となるケアプランデータ連携システムに関する概要を確認し、 システム導入の必要性や導入メリット、ICT 導入支援補助金との関連性を整理しました。

 昨今のコロナ禍において新たな生活様式が求められている中、介護現場では以前よりも ICT 活用の機運が高まってきたといえ、今回の連携システムの導入は全体のシステムを見直す絶好の 機会と受け入れていきましょう。以上、事業運営の一助としてご参考にして頂ければ幸いです。

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