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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2023.1月号


「介護経営を左右する新たな政策パッケージの全貌」

 今月号では、政府の全世代型社会保障構築本部が12月16日に公表した『介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ』をもとに、「I.政府が推進する政策パッケージの全体像」を確認し、「II.介護経営に直結する 8つの政策パッケージ」を整理していきます。今回の政策パッケージは、給付と負担の見直し等の介護保険制度改正には関与しませんが、介護事業者の今後の経営や運営に直結する事項になりますので、これらの動向に対し、注視していくことが重要です。

【確認keyword】
「ワンストップ窓口の設置」「ICT導入支援」「好事例の普及促進」「経営の見える化」「テクノロジ ーの導入・活用」「処遇改善加算の見直し」「職員配置基準の柔軟化」「手続きのデジタル化」

[Ⅰ]政府が推進する政策パッケージの全体像

 今後、2040年にかけて生産年齢人口が急減し、介護人材の確保が高齢者介護政策の大きな課題となる中、介護事業者が「生産性の向上」と「働きやすい職場環境づくり」に積極的に取り組んでいくことが不可欠となっています。現場で働く介護職員の勤務環境を改善するためには、個々の事業者における経営改善やそれに伴う生産性の向上が必要であり、ノウハウの展開や改善に向けた具体的な働きかけ等の取組をより一層進めていくことが課題となっています。政府は、こうした課題を改善するうえで策定した『介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ(下図)』を推進していく方針としているため、介護事業者は政策パッケージの8つの事項を意識した取組が重要になります。

[II]介護経営に直結する8つの政策パッケージ

(1)総合的・横断的な支援の実施

①介護現場革新のワンストップ窓口の設置

 介護産業は地域経済の中核的な産業である点を踏まえ、介護事業者の経営を支えるため、経営改善や事業者の様々な実情・ニーズを適切な支援につなげるワンストップ型の総合的な事業者支援窓口「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」を各都道府県に設置する方針とされた点に注目です(下図)。経営支援を活用しやすい環境整備は介護事業者にとって朗報であり、今後、積極的に活用していくことがポイントになります。

②介護ロボット・ICT 機器の導入支援

 介護ロボット・ICT機器の導入を効果的に進めるため、上記1のワンストップ窓口を活用しつつ、全国の大規模な実証等を行った厚労省の導入モデルを公表していく方針であり、機器導入の際には補助金を活用した取組の強化が望まれています(下図)。

(2)事業者の意識変革

③優良事業者・職員の表彰等を通じた好事例の普及促進

 職員の待遇改善・人材育成・生産性の向上などに取り組む介護事業者を認証するパイロット事業(2022年で30都府県)を拡大し、すべての都道府県での実施を目指していく方針です。優れた事業者・職員を表彰し、全国に発信するイベントを行うなどの仕組みが早期に導入され、優良事例の横展開が図られる点が注目ポイントになります(下図)。

④介護サービス事業者の経営の見える化

 介護経営の見える化を推進し、介護事業者が経営改善や待遇改善に取り組むための環境づくりを進めていくため、社会福祉法人などと同様に、介護サービス事業者に対しても、財務状況の公表を義務付け、詳細な経営情報の報告を義務付けてデータベースを整備していく方針です。介護サービス情報公表制度における処遇の見える化、平均賃金や処遇改善の状況などの閲覧・比較により、人材確保にも活用される形となります(下図)。

(3)テクノロジーの導入促進と業務効率化

⑤福祉用具、在宅介護におけるテクノロジーの導入・活用促進

 今般の研究では、センサー・ウェアラブルなど先端機器を活用すれば、サービスの質の確保とともに、一人の介護職員がより多くの者に介護サービスを提供できることが実証されています。介護職員の負担軽減等に資するICT 等テクノロジーの活用について、情報共有や記録等の円滑化の視点や、サービスの質の確保や導入時の課題などの調査研究を更に進め、機器の導入・活用においては福祉用具貸与等の給付種目の追加など最新の技術が的確に反映されるよう、引き続き検討を進めていく方針としています(下図)。

⑥生産性向上に向けた処遇改善加算の見直し

 現在、3本立てとなっている処遇改善に関する加算について、これらの事務手続や添付書類の簡素化を進めるとともに、加算制度の一本化について検討を進める方針に注目です。また、処遇改善加算等の取得要件である職場環境等の要件について、生産性の観点から見直しを検討することとしています。着実な取得率の向上を図るため、社会保険労務士等による個別相談を行い、処遇改善を底上げしていく方向となっています(下図)。

⑦職員配置基準の柔軟化の検討

 現在、介護施設では、サービス利用者3人に対して職員1人という3:1の職員配置基準となっていますが、優れた運営ノウハウに基づき、テクノロジーやいわゆる介護助手等の取組を先進的に導入し、組み合わせることで3:1 より少ない人員で運営が可能(次ページ上図)になってきました。実証事業などで得られたエビデンス等を踏まえ、先進的な取組を実施している事業所の人員配置基準を柔軟に取り扱うことを含め、次期報酬改定の議論の中で基準の見直しを検討していきます。また、ユニット型の定員においても、2021年度介護報酬改定の際に緩和した運用状況等を検証して、職員配置の弾力化に向けた方策の議論を進めていく方針としています。

⑧介護行政手続の原則デジタル化

 届出や報酬請求の行政手続の多くは紙ベースで行われ、書類作成・保存だけで相当のコストとなり、加えて市町村ごとに独自の記載欄を求める例も多く、システム化による効率化が難しい状況にあります。2022年10月から電子申請・届出システムの運用を開始したことを踏まえ、全自治体によるシステムへのアクセス確保と様式の全国標準化を行うとともに、電子申請・届出システムの利用を原則化する方針となっています。(下図)。

▼今月号の考察

 今回は、介護事業者の今後の経営や運営に直結する『介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ』の全貌を整理しました。詳細が不明な点も多くありますが、今後の大局的な方向性として押さえておくことがポイントになります。以上、ご参考にしていただければ幸いです。

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