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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2023.2月号


「介護 DX に直結している医療 DX の基本と方向性」

 今月号では、2022年秋から審議がスタートした医療DX令和ビジョン2030厚生労働省推進チームなどの公表資料をもとに、「I.医療DXと介護情報の関係性」を確認し、「II.医療DXに必要となる介護情報」を整理していきます。

 DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術によってビジネスや社会、生活の形・スタイルを変える(Transformする)ことであり、介護分野における推進も例外ではありません。現時点では、介護DXは医療DXの一部として取扱われている状況であり、介護事業者の今後の運営に直結する事項になりますので、今後の動向に注視していかなければなりません。

【確認keyword】
「健康・医療・介護分野における医療DXの目的」 「全国医療情報プラットフォームにおける介護情報の位置づけ」 「介護分野における医療DXの重要な位置づけ」 「医療DXに必要となる介護情報」

[Ⅰ]医療DXと介護情報の関係性

■ 健康・医療・介護分野における医療DXの目的

 初めに押さえておきたいポイントは、介護DXは介護単体で進められている訳でなく、医療DXの一部として推進されているため、介護事業者が今後の介護DXに対応していくには、医療DX全体の理解度を高めていくことが重要になります。医療DXとは「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療 報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。この医療DXの基盤を構築していく上で、「科学的介護情報システム(LIFE)」 や「ケアプランデータ連携システム」は医療DXの推進に欠かせない介護情報の収集に必要であり、介護事業者の参画が不可欠となっている点を押さえておく必要があります。 そして、医療DXの実現に向けた健康・医療・介護情報の収集・利活用は「個人のため(エビデンスに基づく最適化された治療・ケアの実現)」のみならず、「社会のため(研究への利活用を促進して社会還元)」に活用される点も重要なポイントになります(下図)。

■ 全国医療情報プラットフォームにおける介護情報の位置づけ

 医療DXの推進に欠かせない情報を集積していく基盤は「全国医療情報プラットフォーム(以下、プラットフォームに略)」と呼ばれ、2022年秋から構築に向けた検討が進められています。このプラットフォームの中心的な役割を果たすのが、医療機関や薬局の受付窓口のマイナ保険証による認証に用いられている「オンライン資格確認等システム」であり、利用者(患者)の治療に関する情報収集は医療機関や薬局が関与しています。

 プラットフォームでは、医療機関等が収集する医療情報や介護事業者における介護情報を集約し、クラウド間連携を実現して、自治体や介護事業者等間も含めて、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想となっています(下図)。

 今般、介護事業者に対して推進されている「科学的介護情報システム(LIFE)」や「ケアプランデータ連携システム」における利用者情報は、利用者の治療やケアに必要な情報の1つであり、「要介護度の改善/悪化」や「ADL維持向上/低下」に関わる利用者情報として、収集した情報のデータ入力が必要とされている状況です。そして、利用者に関する介護情報等を電子的に閲覧できるプラットフォームを整備することにより、医療機関や介護事業者のみならず、多様な主体が協働して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムの深化・推進にも繋がることが期待されています。また、「自治体」が住民の介護情報等を得ることにより、被保険者が受けている自立支援・重度化防止の取組の状況等を把握した介護保険事業の運営に活用できる点のほか、紙でのやりとりが減ることで事務負担が軽減する点も、DXを推進するメリットに挙げられます。

[II]医療DXに必要となる介護情報

■ 介護分野における医療DXの重要な位置づけ

 介護分野のデータヘルス改革では、医療DX(介護DXを含む)の推進に向けて「1利用者自身が介護情報を閲覧できる仕組みの整備」、「2介護事業所間等において介護情報を共有するための標準化」、「3科学的介護の推進」が進められています(下図)。

 上記1は「全国医療情報プラットフォーム」の構築、2は介護事業所間の情報共有の一環として「ケアプランデータ連携システム」、3は利用者のADL値や栄養状態、口腔機能・嚥下の状態などの情報を収集する「科学的介護情報システム(LIFE)」が関与し、医療DXはもとより利用者情報の連携において重要な位置づけとなります(次ページ上図)。

 2023年4月に稼働となる「ケアプランデータ連携システム」は、国民健康保険中央会において、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で毎月やりとりされるケアプランの一部情報(予定・実績)をデータ連携するシステムであり、ケアプランをデータで送受信できるようになり、現場業務の負担軽減に繋がることが期待されています。

 2021年4月から稼働された「科学的介護情報システム(LIFE)」は、介護施設・事業所が、介護サービス利用者の状態や、行っているケアの計画・内容などを一定の様式で提出することで、入力内容が集計・分析され、当該施設や利用者にフィードバックされるシステムです。介護施設・事業所では、提供されたフィードバックを活用してPDCAサイクルを回して介護の質向上を目指していきます。2021年度介護報酬改定ではLIFEへのデータ提供等を要件とした科学的介護推進体制加算が新設されて推進されています。

■ 全国医療情報プラットフォームにおいて必要となる介護情報

 利用者の「要介護度の改善/悪化」や「ADL維持向上/低下」に関わる情報(下図)は、利用者へのサービス提供のみならず、ビッグデータの蓄積・分析等を通じて今までにない製品の開発や、新たなサービス提供などに繋がるため、収集が極めて重要になります。

 「全国医療情報プラットフォーム」の構築に向けて、収集すべき介護情報として下図の具体的な一覧(案)が示され、様々な種類や詳細な情報の収集は入力する介護現場の負担になる点を考慮しながら、現在、検討が進められている状況です。

 これらの介護現場の電子的な対応の現状は、要介護認定等に係る認定情報や認定調査項目等の情報を含む「要介護認定情報等」、介護報酬を請求する際の「介護給付費請求情報」、介護報酬のLIFE関連加算の「LIFE で収集している情報」が取扱われています。医療機関が取扱う「診療情報提供書・入退院情報」や「主治医意見書」、「訪問看護指示書・報告書」は、今後プラットフォームにおいて情報収集されていくと見込まれています。

 そして、これから「ケアプラン(データ連携システム)」と「提供したケアに関する記録(日々記録されている提供したサービスの記録、食事・排泄の状況、バイタル、生活状況等)」において電子的な対応が必要になっていく方向となります。介護事業者に押し寄せる医療DXの波を乗り切るためには、段階的な介護情報の電子化に適宜対応していく必要があり、医療DXの主旨を理解して環境変化に柔軟に対応していくことが大切です。

▼今月号の考察

 今回は、医療DXと介護情報の関係性を確認し、医療DXに必要となる介護情報のポイントを整理しました。詳細が不明な点も多くありますが、医療DXに向けた今後の大局的な方向性として押さえておくことがポイントになります。以上、ご参考にしていただければ幸いです。

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