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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2023.5月号


「介護ロボット・ICT導入支援補助金のポイント整理」

 今月号では、介護分野における2023年度予算を踏まえ、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の公表資料をもとに、「I.政府が推進する環境改善に向けた政策パッケージの全体像」を確認し、「II.ワンストップ窓口・介護ロボットICT導入に係るポイント」を整理していきます。

 補助金の活用においては、詳細な補助率や対象枠、募集時期など、各都道府県の地域医療介護総合確保基金の最新情報を確認する必要があります。今月以降、公募を開始する自治体が増加していく見込みであり、過去には補助金の交付希望者が多く、申請額が予算額を上回って抽選になった例もあるため、希望する場合には、まずは各取扱業者に最新動向を確認していきましょう。

【確認keyword】
「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージの推進」 「介護現場革新のワンス トップ窓口の設置」 「介護ロボット・ICT導入支援補助金のポイント、医療DXとの関係性」

[Ⅰ]政府が推進する環境改善に向けた政策パッケージの全体像

 今後、2040年にかけて生産年齢人口が急減し、介護人材の確保が高齢者介護政策の大きな課題となる中、介護事業者が「生産性の向上」と「働きやすい職場環境づくり」に積極的に取り組んでいくことが不可欠となっています。現場で働く介護職員の勤務環境の改善には、個々の事業者の経営改善やそれに伴う生産性の向上が必要であり、ノウハウの展開や改善に向けた具体的な働きかけ等の取り組みをより一層進めていくことが課題となっています。政府は、こうした課題を改善するため「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ(下図)」を推進していく方針としています。本編ではこのうち「ワンストップ窓口」と「介護ロボット・ICT導入支援」のポイントを確認していきます。

[II]ワンストップ窓口・介護ロボットICT導入に係るポイント

■ 介護現場革新のワンストップ窓口の設置

 現在、都道府県が主体となった介護現場の生産性向上を推進する取り組みの広がりは限定的であり、また、既存の生産性向上に係る事業は数多くあるものの、実施主体や事業がバラバラという課題があります。これらを一体的に実施するため、都道府県の主導のもと、介護人材の確保・処遇改善、介護ロボット・ICT等のテクノロジーの導入、介護助手の活用など、介護現場の革新、生産性向上に資する様々な支援・施策を総合的・横断的に一括して取り扱う支援が必要となっています。

 2023年度は、こうした介護現場が必要とする適切な支援につなぐワンストップ型の介護事業者への総合的な支援として、地域医療介護総合確保基金の支援メニューに「介護生産性向上推進総合事業(従前の業務改善支援事業の拡充)」が設けられます。この支援メニューにより都道府県が主体となって、2023年度から数年かけて「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」をすべての都道府県に設置することが決定されました(下図)。具体的には、2018年度にスタートした介護現場革新会議と連携し、介護事業者に対して「介護ロボット・ICT導入の支援」「業務改善の支援」「生産性向上の推進」についてワンストップ型の支援を実施していきます。このうち、介護ロボット・ICT等に係る相談窓口業務(機器の体験展示、試用貸出、専門相談員、研修費用等)が「介護ロボット・ICT導入支援補助金」の申請に関わっていくものと思われます。

 総合相談センターの設置により、介護現場のニーズを把握することで、現場の実態や地域の特性に応じた対応が可能となり、兼ねてより介護事業者が支援を受けるハードルとなっていた支援メニューごとに実施主体が異なり、対応する窓口が各々で手続きが煩雑であった点が解消されます。また、煩雑な手続きの解消とともに、多岐にわたるアドバイスや支援を包括的・一体的に受けられることが容易になるため、かつてない画期的な見直しだといえます。介護事業者は「介護ロボット・ICT導入支援補助金」の活用有無に関わらず、新たに設置される総合相談センターの動向に注目し、必要に応じて活用していくことが不透明な時代を乗り切るポイントになるでしょう。

■ 介護ロボット・ICT導入支援補助金のポイント

 介護ロボット導入支援事業(補助金)は、これまで年々拡充されてきましたが、2023年度は従前と同じ内容にて実施されます(今年度までの時限措置)。導入補助額(1機器あたり)は移乗支援と入浴支援が上限100万円(それ以外は上限30万円)、見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備に対しては上限750万円と設定されています(下図)。

 補助率は、都道府県の裁量により設定され、導入計画書において目標とする人員配置を明確にした上で、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフト等の複数の機器を導入し、職員の負担軽減や効率化などの一定の要件を満たした場合は3/4(それ以外は1/2)を下限に設定されています。

 介護事業者が補助金を活用する際は、各都道府県の募集要項を確認していく必要があります。そして、今年度に限っては、総合相談センターの設置前に補助金の公募が始まるか、総合相談センターの設置により補助金の公募前に機器の体験・試用貸出等が始まるかは各都道府県によって異なるため、そうした動向にも注視していく必要があります。

 また、ICT導入支援事業(補助金)では、2019年度から業務効率化を通じた職員の負担軽減を図ることを目的として、ICT機器やソフトウェアの導入支援が行われてきました。介護事業者は、利用者のQOLに直結し、社会資源となる介護データを取扱う重要性を再認識し、ICT対応の取り組みを強化させていくことが重要です。

 ICT機器やソフトウェアの導入は単なる機材やツールの導入として片付けられる話ではなく、介護現場の生産性向上や働き方改革の推進の一翼として活用される点を踏まえて導入し、運用していくことがポイントになります。とりわけICT化は、コロナ禍の感染予防策として注目を集め、利用者と職員の接触を最低限に抑えるセンシング技術や遠隔ツールなどは、人材不足への対応や職員の働きやすさの改善にも有効であるため、ICT全般のインフラ整備の追い風となり、導入の必要性が高まってきたといえます。

 2023年度のICT導入支援補助金は、従前と変わらないまま、新たに財務諸表のCSV出力機能等を有する介護ソフトが対象に追加されました(下図)。また、今年度も引き続き、「ケアプランデータ連携システムの利用」および「LIFEデータの活用」等に対して、補助割合が3/4に拡充される要件があり、未導入の場合には活用すべき補助金といえます。

 「ケアプランデータ連携システム」は、介護事業所に設置される「ケアプランデータ連携クライアント」と運用センターに設置される「ケアプランデータ連携基盤」から構成され、事業所間のケアプランデータのやり取りを行う仕組みとなります。ケアプラン標準仕様におけるデータ入力の業務削減により、文書作成に要する負担が大幅に軽減され、異なるベンダーとのデータ連携が可能となります(下図)。介護事業者は、システム導入の検討に際し、今後の介護DXを見据えたベンダーを選定することが重要になります。

■ 介護ロボット・ICT導入支援補助金の位置づけ

 医療DXの推進に欠かせない様々な医療・介護・健康情報を集積していく基盤は「全国医療情報プラットフォーム」と呼ばれ、2022年秋から構築に向けた検討が進められています。このプラットフォームの中心的な役割を果たすのが、医療機関や薬局の受付窓口のマイナ保険証による認証に用いられている「オンライン資格確認等システム」であり、利用者(患者)の治療に関する情報収集は医療機関や薬局が関与しています。

 プラットフォームの構築は医療機関等に限らず、介護事業者の参画が不可欠となっています。プラットフォームでは、医療機関等が収集する医療情報や介護事業者における介護情報を集約し、クラウド間連携を実現して、医療機関や自治体、介護事業者間も含めて、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想となっています。つまり、医療DX(介護DXを含む)の基盤を構築していく上で「ケアプランデータ連携システム」や「科学的介護情報システム(LIFE)」は介護情報の収集に必要であることから、介護事業者の積極的な参画がなければ成し得ない構想である点を押さえておかなければなりません。

 今般、介護事業者に対して推進されている「ケアプランデータ連携システム」や「科学的介護情報システム(LIFE)」における利用者情報は、利用者の治療やケアに必要な情報の1つであり、「要介護度の改善/悪化」や「ADL 維持向上/低下」に関わる利用者情報として、収集した情報のデータ入力が必要とされている状況です。そして、利用者に関する介護情報等を電子的に閲覧できるプラットフォームを整備することにより、医療機関や介護事業者のみならず、多様な主体が協働して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムの深化・推進にも繋がることが期待されています。また、「自治体」においても住民の介護情報等を得ることにより、被保険者が受けている自立支援・重度化防止の取り組みの状況等を把握した介護保険事業の運営に活用できる点のほか、紙でのやりとりが減ることで事務負担が軽減する点も、DXを推進するメリットに挙げられます。

 こうした点から「介護ロボット・ICT導入支援補助金」が推進されている訳であり、経済的な支援が受けられるタイミングでのシステム導入が活用のポイントになります。併せて、今年度は設置時期が明らかとなっていない「介護生産性向上総合相談センター」の動向に注視しつつ、2024年度介護報酬改定に備えて、導入する介護ソフトベンダーの医療DXへの対応を確認し、改修や入替など、次の展望を見定めていくことが重要です。

▼今月号の考察

 今回は、2023年度予算に係る介護ロボット・ICT導入支援補助金のポイントを整理しました。介護ロボット・ICT導入に限らず、様々な購買やツールの導入は、経営者・管理者・現場担当者が納得した選定ができるよう、各々の立場での優先事項を確認し合いながら話し合いを重ねていくことが重要です。以上、介護経営に関わる最新動向としてご参考にして頂ければ幸いです。

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