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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2023.11月号


「介護情報基盤におけるLIFEと医療DXの関連性」

 今月号では、10月11日の介護給付費分科会において示された2024年度介護報酬改定に向けた基本的な視点案と、全国医療情報プラットフォームに関する医療DXの最新動向を踏まえながら、「I.2024年度介護報酬改定の方向性とLIFEの位置づけ」を確認し、「II.介護情報基盤の整備に向けたLIFEと医療DXの関係」を整理していきます。現在のLIFEはデータ収集とともに、蓄積されたデータに基づくフィードバック情報の介護現場での活用が求められている段階です。他方では、収集した利用者情報を医療・介護関係者で共有していく基盤整備が進められており、より実用的な項目や形式へと転換される可能性が高く、その動向にも注視していかなければなりません。

【確認keyword】
「2024年度改定は前回踏襲」「LIFEの特徴と展望」「情報共有の基盤づくり」「2024年度が本格的なシステム開発・改修のタイミング」「全国医療情報プラットフォームの構築」

[Ⅰ]2024年度介護報酬改定の方向性とLIFEの位置づけ

 2024年度介護報酬改定に向けた基本的な視点は12月に正式に決定されますが、現時点の案として「1地域包括ケアシステムの深化・推進」「2自立支援・重度化防止に向けた対応」「3良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり」「4制度の安定性・持続可能性の確保」の4つが列挙されました(下図)。4つの案は、前回改定の基本的な視点のうち「感染症や災害への対応力強化」が1に組み込まれ、3が「介護人材の確保・介護現場の革新」から文言が修正されただけで内容はほぼ変わらないことから、2024年度改定は前回改定を踏襲したメンテナンス改定になる方向性は確定的だと推察されます。

 4つの視点は2024年度改定の方向性に関わる重要なキーワードになります。本編のテーマに選定した「LIFE」も引き続き推進されるのは確実であり、関連する「介護分野における医療DXの推進」の方向性も併せて理解しておくことが重要だといえるでしょう。

[Ⅰ]介護情報基盤の整備に向けたLIFEと医療DXの関係

■ 科学的介護情報システム(LIFE)の特徴と展望

 LIFEの特徴は、介護事業者が科学的根拠に基づく「質の高いケア」と、利用者のニーズや希望をふまえた「個別ケア」を実践していくために、記録されたサービスの利用者の状態やケアの計画・内容の「収集データを提出」して、蓄積されたデータに基づいて提供された「フィードバック情報を活用」する仕組みとなっている点です(下図)。

 次に「LIFE」の現状を確認すると、2021年4月にデータ収集が開始され、その後フィードバックが開始となり、2023年度に事業者単位・利用者単位のフィードバックが本格化する中、フィードバック情報の介護現場での活用が求められている状況です(下図)。

 さて、2024年度介護報酬改定に向けた審議では、LIFEの見直しとして、「収集データの精査(情報収集項目の見直し、入力負担の軽減策)」や現行で対象となっていない「居宅介護支援や訪問系サービスなどへ対象拡大」、アウトカム視点を含めた「科学的介護推進体制加算の評価見直し」などが挙げられています。介護報酬改定は政策を誘導する常とう手段であり、LIFEの推進は改定で増額が期待される数少ない加算だといえます。

 「収集データの精査」や「居宅介護支援や訪問系サービスなどへ対象拡大」が必要とされる背景には、政策的にLIFEを含む介護情報の「情報共有」の必要性が増しているからであり、「情報共有」の基盤づくりに対しても着目していくことが大切です。現状における各専門職が個別に情報のやりとりを行う形態から、今後は医療・介護の関係者間で利用者に関する情報を共有しつつ、さらに利用者本人・家族等へ共有される情報を関係者が共有する形へ転換していく方針であり、利用者情報の利活用の幅が広がります(下図)。この情報基盤となるのが「全国医療情報プラットフォーム」の構想になります。

 介護分野の情報基盤の整備は発展途上の段階にあり、2024年度が本格的なシステム開発・改修のタイミングに差し掛かります(下図)。「全国医療情報プラットフォーム」の構築における情報共有に向けて、医療分野ではカルテ情報の厳選が進められている中、介護分野でもLIFEの「収集データの精査(情報収集項目の見直し、入力負担の軽減策)」が不可避であるため、2024年度改定での見直しや刷新は決定的だといえるでしょう。

■ 全国医療情報プラットフォームの特徴と期待効果

 医療DXの中核となる「全国医療情報プラットフォーム」では、情報基盤が医療・介護・行政自治体の3つに区分され、介護情報の基盤整備も含まれています(下図)。介護情報に関わる利用者情報の収集は、介護事業者の参画が不可欠であり、「LIFE」や「ケアプランデータ連携システム」、「介護情報データベース」も「全国医療情報プラットフォーム」の構築の一翼を成していく点を押さえておかなければなりません。

 プラットフォームは、医療機関等が収集する医療情報や介護事業者における介護情報を集約し、クラウド間連携を実現して、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想です。その当事者は国民(利用者・患者)を中心に、医療機関・薬局・救急隊・介護事業所・医療保険者・介護保険者・自治体・保健所が関わっていきます。具体的には、1救急・医療・介護現場の切れ目ない情報共有、2医療機関・自治体サービスの効率化・負担軽減、3健康管理、疾病予防、適切な受診等のサポート、4公衆衛生、医学・産業の振興に資する二次利用-4つのユースケースが期待されています。

 「全国医療情報プラットフォーム」における介護情報の基盤づくりでは、「自治体・利用者・介護事業者・医療機関」が、利用者に関する介護情報等を電子的に閲覧できる環境を整備することが展望され、以下の4つの期待効果があります。これにより多様な主体が協働して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムの深化・推進につながることを目指しています(下図)。現行の「LIFE」や「ケアプランデータ連携システム」はプラットフォームの構築に欠かせないピースである点を理解し、現行は完成形ではなくプラットフォームの構想次第で変わり得る点も併せて認識しておくことが重要になります。

▼今月号の考察

 今回は、2024年度介護報酬改定の方向性を踏まえ、介護情報基盤の整備に向けたLIFEと医療DXの関連性を整理しました。LIFEのデータ収集は、フィードバック情報の現場活用のみならず、医療・介護関係者で情報共有を行うために不可欠であり、その基盤整備の目的や医療DXの主旨を理解した対応が重要になります。以上、最新動向としてご参考にして頂ければ幸いです。

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