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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2024.01月号


「2024年度改定による処遇改善加算の一本化」

 今月号では、社会保障審議会の介護給付費分科会が昨年12月19日に取りまとめた2024年度介護報酬改定の審議報告を踏まえ、「Ⅰ.現行加算を集結した介護職員等処遇改善加算への一本化」を整理し、「Ⅱ.2023年度補正予算による新たな補助金(2024年2~5月)」を確認していきます。

 改定の施行時期は、診療報酬と合わせる形で居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリが6月施行、他のサービスは介護保険事業(支援)計画と揃えた4月施行が予定されるなど、情報が錯綜しているため、最終的な確定情報をもとに対応していく必要があります。

【確認keyword】
「処遇改善加算の刷新」 「職種間の配分ルールの撤廃」 「月額賃金の改善要件の強化」「職場環境要件の生産性向上の強化」 「2023年度補正予算による新たな処遇改善補助金」

[Ⅰ]現行加算を集結した介護職員等処遇改善加算への一本化

■ 介護職員等処遇改善加算のイメージ、サービス別の加算率

 政府は2023年12月20日に、2024年度予算編成の大臣折衝でトリプル改定の改定率を決定しました。診療報酬全体は▲0.12%のマイナス改定となったものの、介護報酬が+1.59%(改定率の外枠を合わせると+2.04%相当)、障害福祉サービス等報酬が+1.12%(改定率の外枠を合わせると+1.5%相当)のプラス改定となり、主に処遇改善や賃上げなどに係る財源が確保される形となりました(下図)。

 こうしたプラス改定の財源確保により、介護職員の処遇改善の活用がさらに広がるよう、現行の「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算」の各区分の要件及び加算率を組み合わせて「介護職員等処遇改善加算(以下、新加算に統一)」に一本化となります。新加算は介護事業者の事務負担軽減や柔軟な事業運営を考慮しつつ、利用者からの理解の得やすさを配慮し、4段階の要件と加算率に傾斜が設けられ、現行要件が一部見直しとなります(次ページ図)。激変緩和措置として2024年度末まで経過措置が設けられる予定となっています。新加算の施行時期は2024年6月となり、2024年2~5月は2023年度補正予算による新たな補助金(P5掲載)の活用が想定され、申請が煩雑になる点に注意しなければなりません。2024年度改定の基本報酬や単位数の詳細な情報については、1月中旬の答申資料を確認していきましょう。

【対象サービス(★は介護予防も含む)】
訪問介護、訪問入浴介護★、通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護★、通所リハビリテーション★、短期入所生活介護★、短期入所療養介護★、特定施設入居者生活介護★、地域密着型特定施設入居者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護★、認知症対応型共同生活介護★、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院

■ 新加算における職種間の配分ルールの撤廃、月額賃金の改善要件の強化

 現行の「特定処遇改善加算」では、職員を「(A)経験技能ある介護福祉職員(B)一般介護福祉職員(C)その他の職種」の3グループに分けて、配分比率を1:1:0.5以下にする職種間の賃金配分ルールで運用されてきました。新加算では、引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとしつつ、職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分が認められる形に改められます。

 また、月額賃金の改善要件では、一時金ではなく月給として配分する金額の増額が求められています。新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、一番下の区分の「新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てること」が基本ルールとなっています。ただし、これまで「ベースアップ等支援加算」を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、新規取得事業所に関するルールとして「新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分すること」が求められています。

 月給のベースアップの推進は、2022年2月に創設された「処遇改善支援補助金」から始まり、2022年10月改定における「介護職員等ベースアップ等支援加算」に引き継がれ、1人あたり3%程度(月額9,000円相当)の月給を引き上げる措置として設けられてきた経緯があります。そして、2024年度予算は、30年ぶりの経済の明るい兆しを経済の好循環につなげるためには物価に負けない賃上げが不可避であるとして、「経済の好循環の起点となる賃上げの実現」を目指した予算配分が特徴的であり、新加算でも月額賃金の改善要件が重視された形となっています。訪問介護による新加算Ⅰ(22.4%)を取得して平均3.8万円/人の加算額のケースでは下図のように月額給与が変わります。

■ 新加算における職場環境要件の見直し

 職場環境要件の見直しは、現行の「特定処遇改善加算」に相当する「新加算Ⅰ・Ⅱ」では各区分にそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、⑰または⑱が必須)、「処遇改善加算」に相当する「新加算Ⅲ・Ⅳ」では各区分にそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む必要があり、激変緩和措置として2024年度中は職場環境要件の実施は猶予される予定です。生産性向上に向けた取り組みは、見守り機器・インカム等のICT機器を導入するキッカケとなり、ガイドラインの遵守が不可欠となります(下図)。

[II]2023年度補正予算による新たな補助金(2024年2~5月)

 2024年6月の新加算の導入を前に、2024年2~5月の限定的な補助金として「介護職員処遇改善支援事業等」が創設となります。この補助金は2023年度補正予算を財源とし、介護業界の賃上げが低水準であることを踏まえ、必要な介護人材を確保するため、2024年の一般企業の春闘に向けた賃上げに先んじて、介護職員の更なる処遇改善を行う目的で導入となります。介護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として「介護職員等ベースアップ等支援加算」に上乗せする形で、収入を2%程度(月額平均6,000円相当)引き上げるための措置と位置づけられています。介護人材の他産業への流出を防ぎ、必要な介護人材の確保に繋がり、介護職員の賃金が改善されることで、日本全体の成長と分配の好循環、持続的賃上げに貢献することが望まれています。

 この他、新加算や上記の補助金を介護事業所が円滑に受給できるよう「介護職員処遇改善加算等の取得促進支援事業」という形で手厚い支援が実施される点にも注目です。支援事業では、加算の新規取得やより上位区分の加算取得、新加算への対応など、介護事業所等への研修会や専門的な相談員(社会保険労務士など)の派遣を通じた助言・指導等の支援を都道府県が行います(下図)。このため、補助金の申請や配分の計算などに不明な点があれば、すぐに都道府県の担当窓口に相談していきましょう。

▼今月号の考察

 今回は、2024年度介護報酬改定において注目される処遇改善加算の一本化の話題について整理しました。処遇改善加算は制度や申請が複雑化してきたため、刷新される運びとなりますが、経営者は職員の誤解や不満にならないよう情報を開示して、丁寧に説明していくことが引き続き大切になります。以上、事業運営の一助としてご参考にして頂ければ幸いです。

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