ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2024.03月号
「ケアプランデータ連携システムの重要な位置づけ」
今月号では、2024年度介護報酬改定における答申情報や、今般の医療DXに関する審議動向を踏まえ、「Ⅰ.2024年度改定と介護情報基盤の構築に向けた最新動向」を整理し、「Ⅱ.ケアプランデータ連携システムの導入に向けたポイント」を確認していきます。
DXとは、デジタル技術によってビジネスや社会、生活の形・スタイルを変える(Transformする)ことであり、医療DXの推進については医療機関等に対するシステム導入の促進により医療情報基盤の整備が進められる中、介護情報基盤の構想も大筋固まってきた状況です。介護DXを含む医療DXは介護事業者の今後の運営に直結するため、今後の動向に特に注視していきましょう。
【確認keyword】
「ケアマネ取扱件数の見直し」「4つの介護情報を取扱う介護情報基盤」「介護情報の利活用の期待効果」「システム導入の試算と効果」「介護テクノロジー導入支援補助金の活用」
[Ⅰ]2024年度改定と介護情報基盤の構築に向けた最新動向
■ 介護支援専門員1人当たりの取扱件数の見直し
2024年度介護報酬改定に伴い「介護支援専門員1人当たりの取扱件数」が緩和され、人員基準の見直しと併せて、基本報酬における取扱件数が見直しとなります。
取扱件数は、居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅰ)では現行の40件未満が「45件未満」に改められ、居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅱ)の40件以上60件未満が「45件以上60件未満」に見直しとなります。居宅介護支援費(Ⅱ)の要件においては、「ケアプランデータ連携システムを活用し、かつ事務職員を配置している場合」に改めて、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅰ)の取扱件数を現行の45件未満を「50件未満」に緩和し、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅱ)が45件以上60件未満から「50件以上60件未満」に改められます。また、介護予防支援の利用者の数え方も現行の1/2換算から1/3換算に緩和となります(下図)。

■ 介護情報基盤の構築による介護情報の共有
介護人材の確保が喫緊の課題とされる中、介護現場の負担軽減や職場環境の改善に繋がる「ケアプランデータ連携システム」は、介護情報基盤として情報共有を進めるうえでも重要な役割があります。介護情報基盤では「要介護認定情報」「請求・給付情報」「LIFE情報」「ケアプラン」-4つの情報を取扱い、今後の活用が見込まれています(下図)。

介護情報基盤は「全国医療情報プラットフォーム」の情報基盤の1つに位置づけられます(下図)。介護情報基盤の構築における介護情報等の利活用では、介護情報の電子化を通じた「利便性の向上」と「業務負担の軽減」、介護事業所間や医療-介護間での電子的共有を通じた「適切なケア提供」と「医介連携の促進」、蓄積された情報の分析による「介護の質向上」と「二次利用の推進」が期待される効果に挙げられています。

介護DXは介護単体で進められている訳でなく、医療DXの一部として推進されているため、介護事業者が介護DXに対応していくには、医療DX全体の理解度を高めていくことが重要になります。医療DXとは「保健・医療・介護の各段階において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。この医療DXの基盤を「全国医療情報プラットフォーム」と呼び、介護分野では「科学的介護情報システム(LIFE)」や「ケアプランデータ連携システム」、「介護情報データベース(仮称)」の基盤構築が進められています(下図)。このプラットフォームは、医療機関等が収集する医療情報や介護事業者における介護情報を集約し、クラウド間連携を実現して、自治体や介護事業者等間も含めて、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想であり、 介護事業者の参画が不可欠となっている点を押さえておく必要があります。

[II]ケアプランデータ連携システムの導入に向けたポイント
2023年4月に稼働となった「ケアプランデータ連携システム」は、これまでFAXや郵送でやり取りしていたケアプランやサービス提供表・実績の転記などを国保中央会のシステムを介してやり取りをする仕組み(下図)です。これにより、FAXや手渡し等の紙媒体によるやり取りや実績データの手入力および転記ミスがなくなり、コストや時間が大幅に軽減されます。システム利用に際しては、1事業所番号ごとに年間21,000円(税込)のライセンス利用料(介護給付費から差引で清算)がかかり、1年毎に更新が必要です。

これまで人手を要していた業務をシステムに移管させた場合のコストや時間の軽減効果は、現状の経費の洗い出しを行えば試算(下図および次ページ上図)ができますが、「ケアプランデータ連携システム」のヘルプデスクサポートサイトが提供する「データ連携による費用対効果を診断かんたんシミュレーションツール」を活用すれば、5つの数値を入力するだけで即座に試算が可能です。まずはシステム導入の効果を把握しておくことが重要になります。そして、システム導入を具体的に進めるうえでは、2024年度に名称が変更となる「介護テクノロジー導入支援事業」の補助金(上限1,000万円、3/4補助)の活用により、導入費用の負担軽減ができる点を考慮した検討がポイントになります。「介護テクノロジー導入支援事業」はこれまでの「介護ロボット」と「ICT」の導入支援を統合した事業に位置づけられます。


なお、システム導入は、単なる機材やツールの採用で片付けられる話ではありません。介護現場の生産性向上や働き方改革の推進の一翼として活用される点を押さえ、業務改善に欠かせない点を計画書に盛り込み、組織全体で導入目的を共有していくことがポイントになります(下図)。介護事業者は、社会資源となる介護データを取扱う重要性を再認識しつつ、利用者のQOLに直結していくDX対応の取り組みを強化させていくことが求められている点を理解し、柔軟に環境変化に対応していきましょう。

▼今月号の考察
今回は、2024年度改定に係る答申情報と医療DXの最新動向を踏まえ、ケアプランデータ連携システムの導入に向けたポイントを確認しました。医療DXが加速度的に推進される中、介護情報基盤の構築に向けての方向性が大筋固まってきたため、補助金を活用しつつ、システム導入の時期を見極めていくことがポイントになります。以上、ご参考にして頂ければ幸いです。
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