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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2024.05月号


「介護現場の生産性向上に向けたポイント整理」

 今月号では、2024年度介護報酬改定において打ち出された生産性向上に関する情報について、「Ⅰ.介護現場における生産性向上の必要性と目的・意義」を整理し、「Ⅱ.生産性向上推進体制加算の取得に向けたポイント」を確認していきます。

 今回、押さえておきたいポイントは、2024年度介護報酬改定において施設系・居住系サービスに義務化(3年間の経過措置)となった「生産性向上委員会」の設置は、新設された「生産性向上推進体制加算」の要件にも組み込まれている点です。施設系・居住系の対象事業者は義務化に対応していく過程で、加算の取得を目指していくのがベターであり、義務化の対象外の居宅・通所サービス事業者においても生産性向上を意識して取り組んでいくことが重要になります。

【確認keyword】
「「加算取得に向けた【介護機器の導入】【職員の業務分担】【委員会の設置】【実績データの報告】4つのハードル」「介護機器メーカーによる補助金活用・サポート体制が生命線」

[Ⅰ]介護現場における生産性向上の必要性と目的・意義

■ 介護現場に生産性向上が求められる背景

 現在、我が国では「労働者の減少」と「高齢者の増加」の2つの大きな人口構成の変化により(下図)、生産性向上(業務改善)に真剣に取り組むことが喫緊の課題となっています。今後、2040年にかけてさらに一層、生産年齢人口が減少していく一方、後期高齢者の増加に伴い介護需要も増大していく中において、介護人材の確保が不可欠となります。介護人材の確保に向けて、介護職員の処遇改善を進めることに加え、介護ロボットやICT等のテクノロジーの導入等による職員の負担軽減に資する取り組みは、生産性向上(業務改善)のみならず、介護サービスの質を確保していくうえで欠かせません。

■ 介護現場における生産性向上の目的と意義

 厚労省では、介護サービスにおける生産性向上が「介護の価値を高める」ことにつながると考え、介護事業者が積極的に取り組めるよう生産性向上ガイドラインを策定して推進しています。ガイドラインに基づく業務の継続的な改善を進めることは「介護サービスの質の向上」に不可欠であり、働くスタッフのモチベーションの向上や楽しい職場・働きやすい職場づくりにより、「人材の定着・確保」に繋げていくことができると期待されています。介護現場における生産性向上では、「介護サービスの質の向上」を目的に、「人材育成」「チームケアの質の向上」「情報共有の効率化」の3つが生産性向上に取り組む意義となり、「介護の価値を高めること」を目指しています(下図)。

 「介護サービスの質の向上」に欠かせない手段となるのが、介護ロボットやシステム導入、見守り機器等といった介護テクノロジーの活用です。介護テクノロジーの活用により、業務の改善や効率化を進めることは「職員の業務負担の軽減を図る」とともに、業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充て、利用者と職員が接する時間を増やすなど、「介護サービスの質の向上に繋げていく」ことが重要になります。

 こうした取り組みを推進する生産性向上ガイドラインは、生産性向上の取り組み経験がない事業所でも導入を手助けする道案内に位置付けられ、生産性向上の手引書として活用することができます。この他、様々な資材やツールが公表されているため、義務化や「生産性向上推進体制加算」の算定に向けて活用していくことが重要です(下図)。

[II]生産性向上推進体制加算の取得に向けたポイント

■ 生産性向上推進体制加算の新設とその概要

 2024年度介護報酬改定では、介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボットやICT等の導入後の継続的なテクノロジー活用を支援するため、「生産性向上推進体制加算」が新設となりました(下図)。

 この加算では、生産性向上ガイドラインに基づく業務改善を継続的に行うとともに、「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(以下、生産性向上委員会に略)」の設置などが要件となっています。生産性向上委員会の設置は、2024年度改定で以下の施設系サービス等に対して義務付け(2027年3月31日まで経過措置)となっています。3年間の経過措置となったものの、加算を取得していくためには委員会の設置が不可欠であり、加算の取得を目指した取り組みをしていくことが義務化に対応しつつ、組織の体制強化につながるでしょう。

 また、加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、加算(Ⅰ)が上位の区分となり、テクノロジー導入の種類、生産性向上の取り組みの成果の確認事項、介護助手の活用など職員間の適切な役割分担に関して違いがあります。加算(Ⅱ)から(Ⅰ)へのステップアップが基本にはなりますが、加算新設の2024年度以前より先駆的に生産性向上の取り組みを進めている場合は、要件を満たせば加算(Ⅰ)を最初から算定することも可能となります。

■ 生産性向上推進体制加算の取得に向けた4つのハードル

 加算取得に向けた準備では「介護機器の導入」「職員の業務分担」「委員会の設置」「実績データの報告」が重要になります。まず、「介護機器の導入」では加算(Ⅰ)を算定するには、以下の①~③の介護機器を全て使用することが求められています。①の機器は全ての居室に設置(全ての利用者を個別に見守ることが可能な状態)、②の機器は同一の時間帯に勤務する全ての介護職員の使用が必要になります。加算(Ⅱ)を算定する場合は、①~③の介護機器のうち1つ以上の使用が必要であり、②の介護機器は加算(Ⅰ)と同様に同一の時間帯に勤務する全ての介護職員が使用することが求められています。

 次に、「職員の業務分担」では、業務内容の明確化や見直しを行い、職員間の適切な役割分担を実施することが求められ、例えば以下の対応が例示されています。これらに限定せず、委員会において現場の状況に応じた必要な対応を検討しなければなりません。

 そして、「生産性向上委員会の設置」は委員会を立ち上げれば済むものではなく、次の4つの検討事項の実施状況を確認し、業務効率化を図ることが求められています。

 委員会のメンバーは、管理者だけでなく、ケアを行う職員を含む幅広い職種やユニットリーダー等の参画が必要であり、3ヶ月に1回以上の開催が求められています。委員会の設置・運営に関しては、この他に様々な委員会の設置も義務付けられている中で、さらに業務負担が増すことや生産性向上の妨げになることを懸念する声も聞かれますが、加算取得のための形式的な組織ではなく、生産性向上を図るための業務改善の推進に欠かせない体制を作り上げていくうえで重要な位置づけにある点を理解することが大切です。そして、委員会の運営や進め方では、業務改善を実施するプロジェクトの参加者を支え、縁の下の力持ちとしての役割を果たす「支援・促し役」の存在が欠かせません(下図)。

 最もハードルが高い「実績データの報告」は、生産性向上の成果を見える化させた指標となります。加算(Ⅰ)では次の①~⑤全て、加算(Ⅱ)では①~③の成果についての報告が求められています。成果の確認は、例えば機器導入前後の状況では同一の利用者および介護職員における比較を要し、報告書の作成と提出が必要になります。

 こうしたハードルをクリアしなければならない「生産性向上推進体制加算」の取得を目指す場合、介護テクノロジ-導入支援の補助金活用も含め、介護機器メーカーによるサポート体制が生命線となるため、これがメーカー選定の決め手になるでしょう。

▼今月号の考察

 今回は、2024年度介護報酬改定において打ち出された施設系・居住系サービスに対する「生産性向上委員会」の設置に関する義務化と「生産性向上推進体制加算」の取得に向けたポイントを確認しました。対象外の事業者においても生産性向上を意識して取り組んでいくことが重要になってきているため、今後の取り組みを推進する一助としてご活用頂ければ幸いです。

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