ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2024.06月号
「生産性向上の取り組みを強化させるキーポイント」
今月号では、『介護分野における2024年度予算』や『介護ロボット等のパッケージ導入モデル(改訂版)~介護ロボット取組事例集~(2024年3月)』などの生産性向上に関する情報を踏まえ、「Ⅰ.介護生産性向上総合支援センターの位置づけ」を確認し、「Ⅱ.生産性向上委員会の設置及び運営のポイント」について整理していきます。
今回、確認する「介護生産性向上総合支援センター」や「介護テクノロジー補助金」、「生産性向上推進体制加算」は、2024年度介護報酬改定において施設系・居住系サービスに設置が義務化(3年間経過措置)された「生産性向上委員会」の設置や運営において押さえておきたいテーマであり、これらの関連性を理解したうえで取り組みを推進していくことがポイントになります。
【確認keyword】
「介護生産性向上総合相談センターと介護テクノロジー補助金の関係」 「生産性向上委員会の役割」 「生産性向上推進体制加算の取得」 「介護テクノロジーの選定プロセスと導入効果」
[Ⅰ]介護生産性向上総合支援センターの位置づけ
今年度は都道府県の主導のもとで、「介護生産性向上推進総合事業」が実施となる点に注目です。「介護生産性向上推進総合事業」では、介護人材の確保・処遇改善、介護テクノロジーの導入、生産性向上に資する様々な支援・施策を総合的・横断的に一括して取り扱う総合的な支援が行われます。この事業の中で新設される「介護生産性向上総合相談センター」では、介護ロボットやICT、その他の生産性向上に関する取り組みを実施するほか、人材確保に関する各種事業等とも連携しながら、介護事業者に対してワンストップ型の支援を実施していきます(下図)。介護事業者は、生産性向上に関する取り組みを今後実施していくうえで、積極的にセンターを活用していくことが重要になります。

「介護生産性向上総合相談センター」では、「①相談窓口の設置」「②伴奏支援」「③機器の展示」「④機器の試用貸出」「⑤研修会の開催」「⑥情報収集・提供」を主な事業内容としています。センターは各都道府県に設置され、すでに専用ページを立ち上げてサイトに情報を掲載している県もあります。しかしながら、多くの都道府県では相談対応や伴奏支援、研修運営におけるアドバイザーの役割を果たす人材の確保や、機器の展示や試用貸出に対応できる企業の招へいなどは一朝一夕で準備ができず、情報公開が遅れているのが実情です。介護事業者においては、都道府県のセンター設置に関する動向をはじめ、今後の公表される情報に対して注視していく必要があります。
この他、介護ロボットやICT機器の導入の費用を支援する「介護テクノロジー導入支援事業費補助金(以下、「介護テクノロジー補助金」に略)」の生産性向上の要件において、「介護生産性向上総合相談センター」を活用する旨が新たに盛り込まれたため、生産性向上に係る補助金を申請する際にはセンターを活用していかなければなりません。
「介護テクノロジー補助金」は、介護テクノロジーを活用した働きやすい職場環境の実現を推進するための補助金と位置付けられます。これまでとの違いは、2024年度予算において、従来の「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が統合され、支援メニューの再構築(※下図の赤字下線が拡充)が行われました。今後ますます介護人材の確保が困難になると予想される中、職員の業務負担軽減や職場環境の改善への取り組みを強化するとともに、生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充て、介護サービスの質の向上にもつなげ、介護現場の生産性向上を一層推進していくうえで、介護事業者による補助金の積極的な活用が望まれています。補助金の活用にあたっては、各都道府県の募集枠や募集期間等の情報収集とともに、現場で導入したい介護ロボットやICT等の製品情報を把握し、「生産性向上委員会」のメイン議題の1つとして取り扱っていくことで、「生産性向上推進体制加算」の取得にも役立てていくことができるでしょう。

[II]生産性向上委員会の設置及び運営のポイント
■ 介護テクノロジー活用における生産性向上委員会の位置づけ
2024年度介護報酬改定では、以下の施設系・居住系サービスに対して、 「生産性向上委員会」の設置が義務付け(2027年3月31日まで経過措置)となりました。

委員会設置の義務化は3年間の経過措置が設けられたものの、「生産性向上推進体制加算」の取得を目指して委員会設置を進めていくことで、義務化に対応しつつ、組織の体制強化につながれば功を奏する形となります。委員会の設置及び開催に向けて検討すべき課題としては下図の7つが挙げられ、委員会設置を検討の際には、まずはこれらの体裁を決めて体制の足場固めをしていくことが重要です。体裁は一度決めて終わりではなく、実情に合わせて不備を改善していけば、より良い体制づくりができるでしょう。

「生産性向上推進体制加算」の取得に向けた準備では「介護機器の導入」「職員の業務分担」「委員会の設置」「実績データの報告」が重要になります。ポイントになるのは、加算取得のための委員会設置ではなく、介護テクノロジー未導入の場合は介護テクノロジーを活用した生産性向上を目的に委員会を設置する点を認識していくことです。結果的に「補助金の活用」と「加算の取得」につながれば、名実ともに委員会の役割を果たすことができます。そして、介護テクノロジー導入済の場合は、下記の4つの検討事項の実施状況を確認して、業務効率化を図っていくことが求められているため、介護テクノロジーの導入前のみならず、導入後も委員会としての役割は重要なものになります。

■ 介護テクノロジーの選定プロセスと導入効果
介護テクノロジーの選定は、補助金受給や製品ありきではなく、導入効果から掘り下げていくプロセスが大切になります(下図)。前述した「介護生産性向上総合相談センター」の試用貸出や展示に対応する機器があれば、積極的に活用していくことも一案です。

実際に介護テクノロジーの導入を行っている施設・事業所による導入効果としては下記が挙げられています。いずれの効果についても短期的に成果が出ることは少なく、中長期的な視点が必要になります。そして、実際に利用する職員が納得し、自らの意識を変えなければ導入の成果は期待できない点を経営者は肝に銘じておかなければなりません。介護テクノロジー導入の意義は、職員の負担軽減を図りながら介護事業者の本来の目的である利用者満足度や介護サービスの質を高める事であり、経営者と職員のベクトルを合わせていくうえで「生産性向上委員会」の設置・運営が鍵を握るといえるでしょう。

▼今月号の考察
今回は、 「介護生産性向上総合支援センター」や「介護テクノロジー補助金」 、 「生産性向上推進体制加算」に関わる「生産性向上委員会」の設置・運営のポイントについて整理しました。
今般、生産性向上は介護経営における最も重要なキーワードであり、介護テクノロジーの導入に不可欠な「生産性向上委員会」の設置を契機に、生産性向上の取り組みを強化していくことが介護事業者に求められています。以上、事業運営の一助としてご活用頂ければ幸いです。
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