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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」 2024.12月号


「介護事業者の運営に直結する介護DXと自治体DX」

 今月号では、介護事業者の運営体制に関わる「Ⅰ.介護DXと自治体DXの関係、介護DXの目的」を確認して「Ⅱ.自治体DXに不可欠なGビズIDアカウント」について整理していきます。

 利用者の介護情報の収集・活用に関わる「介護DX」と、行政手続のオンライン化に関わる「自治体DX」は、どちらも介護事業者の健全な運営の基盤づくりに不可欠です。DX化に係る情報は、様々な省庁が関与しているため、全体を網羅した情報を入手していくことが重要になります。

【確認keyword】
「介護事業者に押し寄せるDX化」「2026年4月のスタートラインが明確に設定された介護DX」「経営データの報告義務化により、すべての介護事業者はGビズIDアカウントの取得が必須」

[Ⅰ]介護DXと自治体DXの関係、介護DXの目的

■ 介護事業者を取り巻く介護DXと自治体DXの関係

 今般、介護事業者を取り巻く環境は大きく変化してきました。環境変化の最大の要因はDX化であり、コロナ禍を契機に大きく加速し、今後のさらなる荒波を乗り越えていくためには、DX化の目的と位置づけをしっかりと理解しておくことが不可欠だといえます。

 介護分野におけるDX化は「介護DX」と「自治体DX」に大別され、「介護DX」は利用者の介護情報の収集、「自治体DX」は行政手続のオンライン化と分類できます(下図)。ポイントを整理すると、「業務効率化」と「負担軽減」がDX化の共通する恩恵となり、介護事業者の「生産性向上・人材定着」、利用者への「介護サービスの質の向上」を目的にDX化が促進されています。介護事業者は、「介護DX」のシステム導入のタイミングを判断しつつ、「自治体DX」の義務化の動向に対しても留意していかなければなりません。

■ 介護DXに関わる介護情報基盤の位置づけ

 「全国医療情報プラットフォーム」の構築に向けた介護分野の情報基盤の整備は、プラットフォームで共有する介護情報の絞り込みが進められる中、2026年4月のスタートラインが明確に設定されたことで(下図)、本格的に介護DXに向けた準備を検討するタイミングに差し掛かってきたといえます。

 介護DXでは、業務効率化によって生み出された時間を活用し、労働環境の整備等による「介護人材の定着」、利用者のケアに充てる時間の増加による「介護サービスの質の向上」といった具体的な効果が期待されています(下図)。システム導入は離職率の低下や人員配置の柔軟化、ケアの質の確保につなげる手段であり、介護DXは生産性向上に寄与する目的がある点を、介護事業者はきちんと認識しておくことがポイントになります。

[II]自治体DXに不可欠なGビズIDアカウント

■ 「電子申請・届出システム」と「GビズID」の概要

 行政や介護現場の業務効率化・負担軽減の一環として、オンラインで指定申請などの手続きを行う「電子申請・届出システム」の利用原則化(介護保険法施行規則に定める法定事項)が進められています。自治体では2025年度までに「電子申請・届出システム」を導入する必要があり、未導入の自治体において対応が迫られています。

 そして、各自治体において「電子申請・届出システム」が完備され、「介護サービス情報公表システム」のオンライン申請が原則化となれば、介護事業者での対応も必要となります。オンラインによる新規指定や変更届出、更新や加算などの申請は、各自治体の範疇において運用範囲や対象サービスの範囲が決められています。

 このオンライン申請のアクセスキーとして用いられるのが「GビズID」であり、IDを利用するにはアカウントの取得が必要になります。「介護サービス情報公表システム」以外にも「介護事業財務情報データベースシステム」と「生産性向上推進体制加算」の報告において「GビズID」が用いられる形となりました。注目すべきは「介護事業財務情報データベースシステム」における経営データの報告義務化により、すべての介護事業者において「GビズID」アカウントの取得が必須となった点です。「GビズID」はデジタル庁が提供する法人・個人事業主向けの共通認証システムであり、複数の行政サービスを一つのアカウントで利用できる特徴があります(下図)。そして、IDには有効期限がないため、一度発行すれば年度更新も不要で使用が可能となっています。

 「GビズID」が利用可能な行政サービスの範囲は拡大し、上記以外にも「社会保険手続きの電子申請」「雇用関係助成金ポータル」「共済制度オンライン手続ポータル」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ミラサポplus」など、オンライン上での行政サービスのスタンダードとなっています。

■ GビズIDアカウント取得に向けた申請方法

 「GビズID」は、行政サービスで利用できる統一アカウントであり、「GビズIDエントリー」「GビズIDプライム」「GビズIDメンバー」という3種類のアカウントがあります(下図)。「介護サービス情報公表システム」や「介護事業財務情報データベースシステム」において使用するアカウントは「GビズIDプライム」となります。

 申請方法はオンラインと郵送を選択できます。オンライン申請の場合、アカウント作成で利用する「メールアドレス」、申請に用いる「パソコン等の端末」、GビズIDアプリをインストールした「スマートフォン(SMS受信、NFC対応)」、法人代表者の「マイナンバーカード(手続きは法人代表者のみに限定)」が必要になり、不備がなければ即日登録完了となります(下図)。

 他方、郵送の申請(マイナンバーカードがない場合)は、上記に加えて「印鑑証明書(法人)・印鑑登録証明書(個人事業主)」と「登録印」、印刷用の「プリンター」が必要になり、不備がない場合には1~2週間程度の審査が目安となります。

 オンライン申請では下図の手順に沿って、スマートフォンとパソコンを利用して登録する形となり、クイックマニュアルを参照することで簡単に登録することが可能です。

 以上の申請により、「GビズID」のアカウントを取得して「電子申請・届出システム」の利用が可能となることで、2023年度分の報告期限が「2025年1~3月」と迫ってきた「介護事業財務情報データベースシステム」の初回報告に対応できます。

 この報告のうち、会計システム等からの出力が推奨される「収益及び費用」の事項は、「GビズID」のアカウントを取得することで、データ報告の外部委任が可能となる点に注目です。「介護事業財務情報データベースシステム」の経営情報の報告を行う場合、委任者(介護事業者)と受任者(会計ソフトウェアベンダ事業者)の双方がIDを取得しておけば、「GビズID」のマイページから委任手続き(代理報告)ができます。この委任機能を利用するには、あらかじめ双方で委任の内容を合意しておく必要があり、会計ソフト等の改修対応の確認とともに、代理報告への対応可否を確認しておけば安心です。「介護事業財務情報データベースシステム」に係る運用方法の手引きは、ほどなく公表される予定であり、こうした実務に関する取扱いについて注視していく必要があります。

 介護事業者は経営・運営に関わる「介護DX」と「自治体DX」が加速する中、きちんと義務化に対応しつつ、必要に応じてシステム導入を進めて効率化を図っていきましょう。

▼今月号の考察

 今回は、介護事業者の運営体制に関わる介護DXと自治体DXの関係、自治体DXに不可欠なGビズIDアカウントについてポイントを整理しました。

 DX化に係る情報は、デジタル庁や総務省、経産省など、様々な省庁の動向に関わり、厚労省の情報だけでは把握できなくなってきたため、全体を網羅した情報を入手していくことが重要になります。以上、直近の「自治体DX」への対応と、今後の「介護DX」の取り組みに係るポイントとしてご参照いただき、運営の取り組み強化の一助にしていただければ幸いです。

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