ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」2025.1月号
「LIFEフィードバック情報の活用ポイント」
今月号では、昨年11月26日から段階的に事業者フィードバックの掲載がスタートしたLIFEについて「Ⅰ.LIFEの位置づけと全体像」、「Ⅱ.フィードバック情報の活用」を整理していきます。
フィードバック情報の活用にあたり、LIFEの担当者とその役割をはじめ、図・グラフの着目点や読み解くポイントの基本をきちんと理解していくことが、初めの第一歩として重要になります。
【確認keyword】
「ケアを継続的に改善してサービスの質を高めるPDCAサイクル」「フィードバック情報を読み解くポイント」「図やグラフの着目点」「すべての加算のフィードバック開始は1月以降予定」
[Ⅰ]LIFEの位置づけと全体像
科学的介護情報システム(LIFE:Long-term care Information system For Evidence)は、介護サービス利用者の状態やケアの計画・内容についてのデータを全国の介護施設・事業所から集め、そのデータを分析し、結果をフィードバックする情報システムです(下図)。介護事業者に対し、LIFEのデータやフィードバック情報の活用により、ケアを継続的に改善してサービスの質を高める「PDCAサイクル」の取り組みが期待されています。

[II]フィードバック情報の活用
■ LIFEの担当者とその役割
LIFEを操作できるユーザーは「管理ユーザー」と「操作職員」となっており(下図)、サービスを提供して様式情報の記入者名としてLIFEに登録する「記録職員」はLIFEの操作はできないものの、個人情報以外の利用者情報は更新できる取扱いとなっています。


LIFEの導入にあたっては「事業所管理者」が利用申請を行い、システムの初期設定は「操作職員」、LIFEの活用・管理は「管理ユーザー」が主体的に関わっていきます(左図)。
「管理ユーザー」と「操作職員」のLIFE操作では、利用者情報の管理として、利用者のケアプランに応じて、各種情報(要介護認定情報やサービス種類、日常生活自立度など)を登録・更新します。データ提出の様式情報の入力はケアに関する計画とその評価・実績等を登録(毎月10日〆)します。様式情報はすべての項目を入力してから登録することが望ましいとされています。
■ フィードバック活用の利点
LIFEを活用する利点のひとつは、LIFEでは全国の介護施設・事業所において同じ項目を用いてアセスメントを行うことから、多職種間や自事業所や施設内の職員間のみならず他の事業所等と情報共有を行う際に役立つことです。同じ“軸”で利用者のアセスメントを行うことによって、共通の認識を持つことができ、利用者の状態を正確に把握できるため、利用者に関わる職員が共通の目標に向かって取り組みやすくなります。
そして、LIFEに提出される項目は全国共通であることから、提供されるフィードバック情報では、所在地や年齢構成、要介護度など、類似した特性の利用者や介護施設・事業所のデータと比較が可能となります。こうした自施設・事業所と他施設・事業所のデータ比較により、「差」がみられた項目を中心に、計画やケアを見直すキッカケとなり、「PDCAサイクル」の取組を強化できることもLIFE活用の利点に挙げられます(下図)。

さらに、多職種で連携した取組につながる点もポイントにあげられます。介護施設・事業所における利用者の自立支援・重度化防止に向けた取組のためには、1人の視点ではなく、介護職員や各専門職のもつ様々な視点で情報を共有することが必要です。LIFEに提出する情報や、LIFEから提供されるフィードバックを職員間で共有し、同じデータを見ながら複数の視点で議論を重ねることで、利用者や提供するケアのあり方についてより多面的に理解でき、職員が自身のケアについて客観的に振り返ることができます。
■ 図やグラフの着目点
フィードバック活用の第一歩は、LIFEから提供されるフィードバック情報の図やグラフの確認であり、フィードバック情報を読み解くうえで“位置”と“変化”に着目していくことがポイントになります。「事業所フィードバック」は全国の同じサービスの介護施設・事業所における相対的な“位置”や、自施設・事業所の利用者の状態の過去からの“変化”、「利用者フィードバック」では各利用者について状態の“変化”に注視していきます。全国平均値だけでなく、サービス別、平均要介護度別、都道府県別などで比較でき、事業所フィードバックは最大で過去12か月のデータを参照できます。
フィードバックの内容が不足している場合や値が不自然な場合は、様式情報や利用者情報に不足や間違いがないかの確認が必要です。グラフは介護サービス種類、表示期間などの条件を指定することで表示が変わり、表示を変えると様々な角度からフィードバックを参照できます。なお、すべてのLIFE関連加算に係る利用者フィードバックの掲載開始は1月末日以降と予定されているため、今後の最新情報に注目していきましょう。
▼ヒストグラムの見方
ヒストグラムは面積が分布の割合を表し、高さはその階級の密度を表しているため、階級幅が異なってもグラフ化することができます(下図)。

▼レーダーチャートの見方
レーダーチャートは複数の項目のデータを正多角形上に表現したグラフです。チェックが1つでも外れていると表示がされませんので、基準値のチェックボックスがあるすべての項目で、基準値に必ずチェックを付ける必要があります(下図)。

▼箱ひげ図の見方
箱ひげ図はデータを大きさ順に並べた時の分布を示しています。値の軸が上向きなので、ひげの下側の末端が最小値、ひげの上側の末端が最大値を表しています(下図)。

なお、フィードバックの図やグラフの確認において“変化”に着目していくことが大事ですが、値に変化があることだけでなく「変化がないことを把握する」ことも重要な確認ポイントになります。例えば「取組の効果として良い状態を維持しているのか」「逆に利用者の希望や目標に対して乖離がある状態で維持されているのか」「変化がないことが望ましい状態であるのか」等々、確認を行う必要があります。
LIFEの活用は、加算取得という経営上のメリットだけではなく、介護DXへの参画という点でも意義があります。医療・介護DXの中核となる「全国医療情報プラットフォーム」の構想において、介護事業者が取扱う利用者情報の収集は、LIFEのみならず「ケアプランデータ連携システム」「介護情報データベース」もプラットフォーム構築の一翼を成していくため、介護事業者の関与が不可欠である点を忘れてはなりません。
▼今月号の考察
今回は、段階的に事業者フィードバックの掲載が開始されたLIFEのフィードバック情報の活用ポイントを整理しました。ケアを継続的に改善し、サービスの質向上に向けて、フィードバック情報を読み解くポイント、図やグラフの着目点をしっかり理解していくことが重要です。
本編は基本とポイントの厳選となりましたので、詳細は「操作説明書」や「利活用の手引き」を、LIFE未導入の際は「導入ガイド」をご参照いただくことをお勧めします。以上、LIFEのフィードバック情報の活用を強化していくキッカケとして、ご参考にしていただければ幸いです。
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