ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」2025.3月号
「2024年度補正予算による支援拡充の注目ポイント」
今月号では、2月上旬に公表された2024年度補正予算の支援事業の内容を踏まえ、「Ⅰ.2024年度補正予算を活用した介護分野への支援」を整理し、「Ⅱ.2024年度補正予算における3つのポイント整理」について確認していきます。
2024年度補正予算は、当初の年度予算では対応できなかった課題や緊急性の高い新たな状況に対処する名目で編成された追加予算であり、2025年度予算の施策に直結する重要な役割があります。本編の掲載情報はポイントの列挙(一部抜粋)となりますので、補助金の受給や支援を受けることを検討の際には、各事業の実施要綱を確認のうえでご判断いただければと思います。
【確認keyword】
「介護人材確保職場環境改善等事業」「訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」「介護テクノロジー導入協働化等支援事業」「ケアプランデータ連携システムの推進」
[Ⅰ]2024年度補正予算を活用した介護分野への支援
2025年度予算に連動した2024年度補正予算は、介護分野では「①介護人材確保・職場環境改善等事業」に806億円、「②介護テクノロジー導入・協働化等支援事業」に200億円、「③訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」に90億円などが配分されました。
各事業の概要を確認すると、「①介護人材確保・職場環境改善等事業」では介護職員等処遇改善加算を取得している事業所に対して、ベースアップではない更なる処遇改善のほか、業務効率化や職場環境の改善を図る支援への補助金が充当されます。「②介護テクノロジー導入・協働化等支援事業」では介護DXの中心を成す介護情報基盤の構築に欠かせない「ケアプランデータ連携システム」の利用促進が盛り込まれた点が特徴的であり、このほか補正予算ならではの予算配分として、経営等の協働化・大規模化への支援にも補助金が充当された点に注目です。「③訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」は、訪問介護事業所を対象とした経営支援や訪問介護員の人材確保を促進する支援が盛り込まれています。本編では、これら3つの事業のポイントを整理していきます(下図)。

[II]2024年度補正予算における3つのポイント整理
■ 新たな処遇改善一時金と特例による要件の煩雑化に留意
今後ますます人材不足に陥っていく介護業界では、介護職の賃金と他業種の賃金差が更に拡大し、給料の高い他産業に転職してしまうことが懸念されています。こうした動きに歯止めをかけるため、常勤の「介護職員1人あたり5.4万円」の更なる賃上げ等の支援として「介護職員等処遇改善加算の取得事業所」を対象とする補助金が充当され(下図)、ベースアップではなく「一時金」や「臨時手当」での支給が可能となっています。

処遇改善加算は、2024年度改定による一本化をはじめ、2025年度は経過措置の延長などの要件弾力化の特例(下図)が盛り込まれ、対応が煩雑になってきたため、事業所の現状と課題を再確認したうえで、補助金受給の準備を進めることがポイントになります。

■ 経営の協働化・大規模化とケアプランデータ連携システムの促進
2024年度補正予算では、従来の「介護ロボット・ICT導入支援」に加えて「経営の協働化・大規模化による職場環境改善」に対する支援が組み込まれた点が特徴的です。モデル施設での補助上限額2,000万円やグループ化による補助なども設定され、 経営の協働化・大規模化による生産性向上を普及・推進させていく方針が顕著となっています(下図)。

これに対して、2025年度予算に基づく介護テクノロジー導入支援事業では、経営の協働化・大規模化は付加されず、介護テクノロジー導入のみの支援が見込まれています(下図)。ICTの補助金では、在宅系は「ケアプランデータ連携システム」の利用促進を図るため、システム利用とデータ連携先の決定が新たに組み込まれる点に注目です。

「ケアプランデータ連携システム」は、介護DXの中心を成す介護情報基盤の構築に欠かせないため、利用促進が図られていきます。2024年度補正予算では、介護テクノロジー定着支援やモデル事業のほかに、システムのトライアル機能の実装として、2025年度にフリーパスの設定を導入して利用拡大を図る公算です(下図)。フリーパスの詳細情報は3月公表予定であり、これを確認しつつ、システム導入を検討の際には導入タイミングを見極めていく中で、まずはベンダーに相談・確認していくことが鉄則になります。

介護情報基盤の整備により、これまでの紙でやりとりしていた情報を電子化することで、市町村、介護事業所、医療機関が利用者情報を円滑に共有でき、業務の効率化(職員の負担軽減、情報共有の迅速化)が可能となります(下図)。そして、介護情報基盤に蓄積された情報を活用し、事業所間や多職種間の連携強化と介護サービスの質向上を図る構想である点をしっかり理解したうえで、システムを活用していくことが肝要です。

■ 特に人材確保の課題が大きい訪問介護への支援
訪問介護は、小規模な事業所が多く、訪問介護員も高齢化していることや、原則として訪問介護員が1人で利用者の自宅を訪問するサービス形態であることなどから、介護人材の中でも特に人材確保の課題が大きい状況です。
訪問介護等サービス提供体制確保支援事業は、人材不足が喫緊の課題である訪問介護等において、担い手の確保と経営改善を図ることで、サービス提供体制を確保する目的があります。具体的には、訪問介護等の地域における持続的・安定的なサービス提供体制を確保するため、研修体制づくりや経験年数が短い訪問介護員への同行支援など、人材確保体制の構築による安心して働き続けられる環境整備をはじめ、事業所規模や中山間・離島などの地域の特性に合わせたきめ細かい支援が盛り込まれています(下図)。

▼今月号の考察
今回は、2024年度補正予算の支援事業の内容を踏まえ、3つの事業のポイントを整理しました。本編の掲載情報はポイントの列挙(一部抜粋)となりますので、補助金の受給や支援を受けることを検討の際には、各事業の実施要綱を確認のうえで判断していただく必要があります。以上、2025年度に向けた取り組みを加速させる一助として、ご活用いただければ幸いです。
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