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ヘルスケア最新情報TOPIX「介護編」2025.10月号

介護DXの実現に向けて加速する介護情報基盤の整備

　今月号では、2025年8月に公開された介護情報基盤ポータルの掲載資料をもとに、「Ⅰ.介護情報基盤の全体像と位置づけ」と「Ⅱ.介護情報基盤の準備・対応ポイント」を確認していきます。

　「介護情報基盤」の運用は、利用者情報のデジタル化を通じて、介護事業者の業務に大きな変革をもたらします。この基盤への対応は、業界全体が持続可能なシステムを構築するために、不可欠な取り組みであり、介護DX実現の鍵を握ります。これまでの非効率な運用から脱却し、介護業界が抱える課題を根本から解決する可能性を秘めていると認識していくことが大切です。

［Ⅰ］介護情報基盤の全体像と位置づけ

■ 介護情報基盤の整備がもたらすインパクト

　介護情報基盤は、紙中心で分断されていた情報をデジタル化し、関係者間の情報共有を円滑にすることで、業務効率化とケアの質向上を目指す仕組みです。その一方で、導入に伴ってICT環境の整備やシステム改修などの課題もあります。介護事業者にとって、介護情報基盤の整備は、業務を楽にするポジティブな効果がある一方で、新たな準備や負担が強いられます（下図）。介護情報基盤の導入が、業務の効率化とケアの質向上につながることを、組織としてしっかり徹底して取り組んでいくことが重要です。

■ 全国医療情報プラットフォームにおける介護情報基盤の位置づけ

　全国医療情報プラットフォームは、「医療・介護・自治体・二次利用」の4つの情報基盤で構成され、それぞれが連携して包括的な情報共有を可能にします（下図）。介護情報基盤は、全国医療情報プラットフォームの一部として、閲覧・登録・管理が徹底され、介護事業者間、自治体や医療機関との情報共有も可能となり、連携を強化する重要な役割を担っています。介護情報基盤の全国的な普及に向けたステップとして、既に医療機関等で導入されている「オンライン資格確認システム」を拡充し、介護保険などの情報をマイナンバーカードで連携させていきます。このため、介護事業者の準備では、マイナンバーカードリーダーなどの機器導入や電子証明書の設定が必要です（詳細は後述）。

　そして、市町村が介護情報基盤を活用するためには、各市町村のシステムを統一された仕様に合わせる必要があり、介護保険事務システムの標準化と改修を要します。この準備を経た上で、2026年度以降に介護情報基盤に集約される各種情報のデータ送信が順次開始され、全市町村での活用開始は2028年4月1日までを目指しています。

［II］介護情報基盤の準備・対応ポイント

■ 介護情報基盤の全体像と整備に向けたスケジュール

　介護情報基盤の構築により、分散して管理されていた各種情報が一元管理され、介護事業者の運用が「介護保険資格確認等WEBサービス」に切り替わる点を押さえておく必要があります（下図）。デジタル化された情報が集約されることで、事務作業の効率化、リアルタイムの手続きが可能となり、ケアの質向上につながることも期待されています。

　介護情報基盤の運用開始時期は、全国一律ではないため、事業所が所在する自治体の計画を把握し、いつから開始となるかを確認していくことから準備が始まります。データ送信はシステム標準化が完了した市町村から2026年4月に開始となります（下図）。

■ 必要な準備事項とその助成金の活用

　介護事業者の準備は、物理的な環境整備が不可欠です（下図）。まずは、インターネットに接続できるパソコンやタブレット、そして安定したネットワーク環境を確保します。

　次に、マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダーを用意し、「介護保険資格確認等WEBサービス」の利用に必須となる電子証明書を端末にインストールします。設定や運用、情報セキュリティに不安があれば、システムベンダーのサポートを検討しましょう。スムーズに対応していくうえで研修を行っていくことも大切です。さらには、自治体DXに伴う「電子申請・届出システム」への対応をはじめ、介護テクノロジーの活用なども包括的に取り入れていくことで、介護DXの実現に近づくことができるでしょう。

　導入を支援するための助成金は、サービス種別に応じて設定されています（下図）。助成対象経費は、上記の準備に必要となる「カードリーダー」と「接続サポート」です。助成金は2025年10月から申請受付が始まる予定であり、事業所が所在する自治体の計画を確認しつつ、システムベンダーの対応状況も併せて情報収集していきましょう。

■ 利用者情報の「玄関口」となる介護WEBサービス

　介護保険資格確認等WEBサービス（介護WEBサービス）は、介護情報基盤を構築する上で不可欠なシステムです。介護情報基盤の利用開始には、介護WEBサービスの設定が必須となります。介護WEBサービスは、情報の一元管理と証書のペーパーレス化による業務効率化や、手続きのリアルタイム化を実現する中核的なアクセスポイントとなり、関連業務が大幅に変わることで、利用者の管理が軽減されるメリットがあります（下図）。

　介護WEBサービスへの運用に替わることで、以下の具体的なメリットを享受できます。

▼今月号の考察

　今回は、介護情報基盤ポータルの掲載資料をもとに、介護情報基盤の全体像や準備・対応ポイントを整理しました。介護事業者は、介護WEBサービスの運用におけるオンライン化とデジタル化が、既存業務に大きな変革をもたらす点に留意していかなければなりません。以上、今後の介護DXに向けた取り組みを加速させる一助として、ご参考にしていただければ幸いです。

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